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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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閑話79 無詠唱

柚季(ゆうき)真桜(まお)視点】

「初めまして、真桜様。ソラ様専属メイドのエルーシアと申します」

「あう」


 深々と頭を下げたのは、ソラきゅんの専属メイド、エルーシア。

 お団子ヘアの彼女はセリーヌを除いたら世界でトップレベルに可愛い部類だろう。

 まさか、ソラきゅんの隣を歩いても見劣りしない女の子がいるなんて……。

 いや、というよりこの女の子を相手に見劣りしない可愛さを誇る男のソラきゅんがおかしいのだけれど。


 というかこの世界、みんな顔がよすぎてずるい。

 ……いや、転生した私が言えた義理ではないか。


 その頭をなでなでとする。


「ふふ、ありがとうございます、真桜様」


 ああ、このまぶしい笑みは勘違いを起こす人続出だろうな。

 きゅんとする器官()が未発達なおかげで、致命傷は避けられた。


「ソラちゃんのお世話もあるのに、呼び出してごめんなさいね」

「いえ……今は暇をしておりましたので」

「ならちょうどよかったわ。ちょっと付き合ってもらえる?」




 庭園を抜けていった先は、お父さんがいつもいる訓練場だ。

 爽やかなイケメンって、汗をかいていてもさまになっているからずるい。

 まあ眼福ではあるけれど。


 今日は迷宮にいっているらしく、居なかった。

 残念。



「さ、着いたわ」


 お母さんは私をセリーヌに預け、エルーシアと対峙した。


「言っておくけど、手加減をしたら承知しないから」

「は、はいっ……!」

「真桜様、危ないから下がっていましょうね」

「あう」




閃光の蝶(フレア・バタフライ)


 お母さんの放つ光はさっき庭園で見た蝶のように静かに舞い踊る。

 いいなー。

 私も早く魔法が使えるようになりたい。


 転生特典で魔力はあるけど、赤ん坊では肝心の詠唱ができないのよね。


 何を隠そう、私は魔法陣オタクなのだ。

 私の履修範囲は狭くて深い。


氷の球壁スフィア・オブ・グレース


 あのゲームの魔法陣を何度もスクリーンショットをしては見つめていた私は、その構造がほとんど分かってしまっていた。


 このゲームの魔法陣はちょうど縦横に四等分して意味を持たせている。


 四等分した右上は『杖』の指定。

 右下は『威力』の指定。

 左下は『範囲』の指定。

 左上は『魔法』の指定。


 これらが時計の0時から時計回りに順番に光を放ち、魔法の呪文が完成するようになっている。


魔喰い本(マジブック・イーター)


 『杖』の指定はトランプのジョーカーのように、どの数字としても扱うような指定の仕方ができるようになっている。

 だから無意識だと全杖指定してしまうのだけれど、使わない杖も指定している分無駄に魔力を消費してしまうらしい。

 これは敵の作る魔法陣が杖によって違い、魔力消費が少なくなっていることから知った。


 お母さんも同郷だけど流石に知らないのね。

 ソラきゅんもしらないのかな?

 それなら、私が成長した暁には二人に教えることとしよう。


水圧銃(ウォーターピストル)!」


 『威力』や『範囲』は魔力をどれだけ注ぐかで書き込み度を変えているらしく、あまり意識する必要はない。

 強いていえば『範囲』について、強化魔法や回復魔法などではたまに自分の外側ではなく、"自分自身"を指定することがある程度だ。


 そして最後に"詠唱"をすることで『魔法』を指定して魔法陣は完成する。


「ディバイン・レーザー」


 いつも思っていたのだけれど、"詠唱"も魔力で肩代わりできないのかな?


「「大雪崩(ビッグ・アバランチ)!」」


 あれこれ思考を巡らせていると、とてつもない雪崩が降り注いできていた。

 ……あれを聖女以外が出せるとか、この世界もしかしてハードゲーム……?


「くっ!」

「サクラ様っ!」


 お母さん、もしかしてピンチ……?


 セリーヌの顔が歪む。

 そんな顔しないで、笑顔になってよ。

 

「あうっ!」


 そうだ。


 ええと、『杖』は今持ってないし、"自分自身"を指定してみよう。

 回復魔法で自分を指定したときの『範囲』の部分をそのまま右上に使えばいけないかな?


 そして、あるだけ魔力を注いで『威力』を上げ、『範囲』はお母さんの前にしよう。


 そして最後に暗記していた「ライトニングバリア」の左上をそのまま"詠唱"の代わりに魔力で書き上げる。


「あうあっ!」


 完成と同時に、杖に指定した私自身が光を纏い――


「きゃっ!?ま、真桜様っ!?」


 そのまま雪崩が降り注いでくる。

 セリーヌは万が一埋もれても私を逃がすように、頭上に掲げていたが、雪崩はこちらまで来なかった。


 雪崩が収まり、こちらにくる二人。

 お母さんは無事だ。

 よかった。


 そんなことよりセリーヌ少佐聞いてくれ、一大事だ。


「サ、サクラ様っ!ま、真桜様がっ……!」

「あうー!」


 無詠唱、できちった……。

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