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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第4章 一新紀元
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第29話 学寮

 レクリエーションが終わり解散すると、校内放送が流れた。


「シエラ・シュライヒさん、エルーシアさん。学園長室までお越しください」


 もう嫌な予感しかしない……。

 けど、エルーちゃんまで呼ばれているのはなんでだろう……?




 職員数に向かう途中だからと、マリエッタ先生が案内してくれた。


「やっぱ人間族は速いですね!」


 マリエッタ先生を抱っこしながら歩く。

 ああ、癒される……。


 横で歩くエルーちゃんがうずうずしていた。


「あ……あの……私も抱っこしてもよろしいでしょうかっ!」


 エルーちゃんも可愛いものには目がないみたいだ。


「はい、どうぞっ!」


 僕の手から降りると、両手を上に挙げ、背伸びしてだっこを催促する。


「わぁ……!」

「ふふふ、先生の魅力に気付いちゃいましたか?」


 むしろ魅力しかないと思う。

 癒しの権化(ごんげ)に癒されつつ、職員室のある中央棟に向かう。




「階段を上って、二階に学園長室がありますっ!では私はこれで!また明日っ!」


 職員室の扉がガラガラと閉まる。


 二階にいくと、木製の重厚な扉があった。


「学園長、失礼いたします」

 エルーちゃんが開き中に入ると、学園長が土下座していた。


「え……?」

()()様……。申し訳ございませんでした……」


 違和感に気付いたエルーちゃんが慌てて扉を閉めた。


「あ、頭を上げてください。あの件はサクラさんにも説明不足の落ち度がありましたから……。次は話を聞くようにしていただきたいですが……」


「すみません……。ですが、何せあれはサクラ様が入って以来の感動でしたから……」


 そんな戦闘狂の感想を聞きに来た訳じゃないんだけど……。


「用件はそれだけですか?」

「いえ……その、サクラ様からソラ様……いえシエラさんとエルーシアさんに御告げを言付かっております」


 そんな嫌な予感がする伝言も聞きたかった訳ではないんだけどね……。


「あの、先に言っておきますが、私の言葉ではなく、サクラ様の御言葉ですので……」


 そんな前置きが必要なくらいヤバい内容なの……?


「大丈夫ですよ。サクラさんにはいつも振り回されていますから。怒るときは一緒にサクラさんに怒りましょう。私達はいわば同士です!」


「ああ……ソラ様は天使様です……!」


 んな大袈裟な。




「では伝言です。『これから二人には、学園寮で生活して貰うわ』」


 声質は似ていないが、サクラさんに似ている口調でそう言った。




「は……!?」




「『だって、いち学生が聖女院から通っていたら怪しまれるでしょう?』とのことです……」


 言われてみると確かにそうだけどさ……。




 けど、問題なのはここは女学園ということだ。

 学園寮ってことは女子寮になる。


「それは駄目ですって……!?」

「何が駄目なのですか?」


 学園長は知らないからね……。


 エルーちゃんに助けを求めるも、可愛らしく首をかしげられてしまった。

 ピンときてないな、これは……。


 共に生活するということは、着替えも、トイレも、風呂も筒抜けになるということだ……。

 それはまずい。まずすぎる……。


「お二人は成績優秀ですから、朱雀(すざく)寮へ入寮となります。個室にトイレもシャワーも付いているとてもいい寮ですよ」


 ……個室!トイレ!シャワー付き!

 最悪の事態が避けられるならいいと考えている時点で僕、大分毒されてきていないか……?


「……わ、分かりました……」


「ありがとうございます。朱雀寮までは私がご案内いたしますね」






 赤レンガ建造物から離れたところに、管理された芝と木製のペンションが並ぶ場所があった。

 一番端にある、この大きな二階建てのペンションが朱雀寮らしい。




「学園長!そちらは、もしかしてシエラちゃんとエルーシアちゃんでしょうか?」


「ええ。こちらは朱雀寮の寮母のフローリアさんです」

「はじめまして。朱雀寮の寮母をしていますフローリアです」


 百合の花のように爽やかな笑顔。

 清廉を絵に描いたような人だ。


「シエラ・シュライヒと申します」

「エルーシアです」


 僕とエルーちゃんは挨拶をして頭を下げる。


「ふふ、よろしくね。そうそう今朝、サクラ様がいらっしゃってね!サクラ様からお訊きしたの!シエラちゃん、大聖女さまのお弟子さんなんですってね!」


 こんな純真そうなな人を二重にも、三重にも騙しているだなんて思うと、とても心が痛くなった。

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