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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第2章 一新紀元

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第29話 学寮

 レクリエーションが終わり解散すると、校内放送が流れた。


「シエラ・シュライヒさん、エルーシアさん。 学園長室までお越しください」


 もう嫌な予感しかしない……。

 けど、エルーちゃんまで呼ばれているのはなんでだろう……?



 ◆◆◆◆◆



 職員数に向かうついでだからと、マリエッタ先生が案内してくれた。


「やっぱ人間族は速いですねっ!」


 マリエッタ先生を抱っこしながら歩く。

 ああ、癒される……。


 横で歩くエルーちゃんがうずうずしていた。


「あ……あの……。 私も抱っこしてもよろしいでしょうかっ!」


 エルーちゃんも可愛いものには目がないみたいだ。


「はいっ、どうぞっ!」


 僕の手から降りると、両手を上に挙げ、背伸びしてだっこを催促する。


「わぁ……!」


「ふふふっ、先生の魅力に気付いちゃいましたかっ?」


 むしろ魅力しかないと思う。

 癒しの権化(ごんげ)に癒されつつ、職員室のある中央棟に向かう。



 ◆◆◆◆◆



「階段を上ってっ、二階に学園長室がありますっ! では私はこれでっ、また明日っ!」


「はい! マリエッタ先生、さようなら」


 職員室の扉がガラガラと閉まる。

 二階にいくと、木製の重厚な扉があった。


「学園長、失礼いたします」


 エルーちゃんが開き中に入ると、学園長が土下座していた。


「えっ……!?」


()()様……。 申し訳ございませんでした……」


 違和感に気付いたエルーちゃんが慌てて扉を閉めた。


「あ、頭を上げてください。 あの件はサクラさんにも説明不足の落ち度がありましたから……。 次は話を聞くようにしていただきたいですが……」


「すみません……。 ですが、何せあれはサクラ様が入って以来の感動でしたから……」


 そんな戦闘狂の感想を聞きに来た訳じゃないんだけど……。


「用件はそれだけですか?」


「いえ……その、サクラ様からソ――いえシエラさんとエルーシアさんに御告げを言付かっております」


 そんな嫌な予感がする伝言も聞きたかった訳ではないんだけどね……。


「あの、先に言っておきますが。 私の言葉ではなく、サクラ様の御言葉ですので……」


 そんな前置きが必要なくらいヤバい内容なの……?


「大丈夫ですよ。 サクラさんにはいつも振り回されていますから。 怒るときは一緒にサクラさんに怒りましょう。 私達はいわば同士です!」


「ああ……ソラ様は天使様です……!」


 んな大袈裟な。


「では伝言です。 『これから二人には、学園寮で生活して貰うわ』」


 声質は似ていないが、サクラさんに似ている口調でそう言った。


「は……!?」


「『だって、いち学生が聖女院から通っていたら怪しまれるでしょう?』とのことです……」


 言われてみると確かにそうだけどさ……。


 けど、問題なのはここは女学園ということだ。

 学園寮ってことは女子寮になる。


「そ、それはさすがに駄目ですって……!?」


「何が駄目なのですか?」


「うっ……ええと、その……!」


 学園長は知らないからね……。


「エルーちゃん!」


「?」


 エルーちゃんに助けを求めるも、可愛らしく首をかしげられてしまった。

 ピンときてないな、これは……。


 共に生活するということは、着替えも、トイレも、風呂も筒抜けになるということだ……。

 それはまずい。まずすぎる……。


「お二人は成績優秀ですから、朱雀(すざく)寮へ入寮となります。 個室にトイレもシャワーも付いているとてもいい寮ですよ」


 個室!トイレ!シャワー付き!

 最悪の事態が避けられるならいいと考えている時点で僕、大分毒されてきていないか……?


「わ、分かりました……」


「ありがとうございます。 朱雀寮までは私がご案内いたしますね」



 ◆◆◆◆◆



 赤レンガ建造物から離れたところに、管理された芝と木製のペンションが並ぶ場所があった。

 一番端にある、この大きな二階建てのペンションが朱雀寮らしい。


「学園長! そちらは、もしかしてシエラちゃんとエルーシアちゃんでしょうか?」


「ええ。 こちらは朱雀寮の寮母のフローリアさんです」


「はじめまして。 朱雀寮の寮母をしていますフローリアです」


 百合の花のように爽やかな笑顔。

 清廉を絵に描いたような人だ。


「シエラ・シュライヒと申します」


「エルーシアです」


 僕とエルーちゃんは挨拶をして頭を下げる。


「ふふ、よろしくね。 そうそう今朝、サクラ様がいらっしゃってね! サクラ様からお訊きしたの! シエラちゃん、大聖女さまのお弟子さんなんですってね!」


 こんなにも純真そうな人を二重にも三重にも騙しているだなんて思うと、余計に胃と心が痛くなった。

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