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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第291話 総力

「……ふふふ」


 観戦中、僕は何故かリリアンナ王妃の膝の上に納まっていた。


「乗せるならソフィア王女にしてくださいよ……」

「ソラ様の方が断然抱き心地がよろしいのですよ」


 リリエラさんといい、僕を抱き枕か何かだと思ってない?

 リリアンナさん美人の上に出るところ出てるから、あまり密着されると困るんだけど……。


「今回はご加護は?」

「サンドラさんには土魔法の適正がありますが、今回加護は流石にズルいので渡していません」

「土というと……あの聖獣ドリアード様でございますか?」


 横にいたファルス王が反応した。

 森に縁があるエルフだから気になるのだろうか?


「はい。土の聖獣であるリアか七色の聖獣であるヴァイス、もしくは土の神獣・青龍か七色の神獣・鳳凰のどれかですね」

「神獣様……」


 前者二人は僕が最上級魔法の召喚魔法を使えば呼べる。

 しかし聖女は光の神獣ハープちゃんしか喚べないので、僕が神獣二体は喚ぶのは無理だ。


「鳳凰は気まぐれで住処(すみか)を変えますし、まず加護を貰う以前に探すのが大変ですから実質三択ですけどね」

「ソラ様、普通ならばその三択もあり得ないのですよ……?」


 リリアンナ王妃にもやんわりと呆れられてしまった。


「まあ、加護がなくともどうとでも強くなれますから。魔力の見えるハイエルフには魔力をカンストさせて挑めば、まず侮られることはなくなりますし」

「師匠、カンストすることをさも当たり前のように語らないでください……」

「ハイエルフは皆さん魔法使いが多いため、魔法防御と体力をカンストさせておけば、まず魔法は効かなくなってあとは魔法を食らいながら殴っていれば勝ててしまいます」

「我々の魔法が……」

「き、効いていないぞ!」


 慌てるハイエルフ達に落ち着きを取り戻したサンドラさんはゆっくりと『聖棍ユグドラシル』に魔力をためて魔法を放つ。


巨木の蔦(ヒュージ・アイヴィ)


 大きな蔦が地面からにょきにょきと生え、ハイエルフを悉く拘束する。


「ぐあぁっ!」

「くそっ……解けん……化け物めっ!」

「ほっほっ、少しは考えよ。巨大岩(ギガントロック)


 後ろに控えていたオラフさんが土魔法で巨大な長方形の岩を作り上げ、それがサンドラさんへ傾き押し潰そうとする。


「なるほど、直接魔法をぶつけると魔法防御参照ですが、岩で押し潰すのは物理的なもの。考えましたね」


 サンドラさんは避ける素振りもなく、聖棍を左手に持ち代える。


「でも、残念でしたね。実は物理攻撃もカンストしているんです」


 土魔法でその右拳に黒曜石のような黒い塊を纏うと、サンドラさんは身体強化して腰を捻り力をためる。

 長方形の大岩が倒れるのに合わせ、下から拳を振り上げる。


「チェストォ!」


 ゴオオォンと凄まじい音が鳴る。

 拳は大岩に見事に大きな亀裂を入れられ文字通り破壊されてしまった。


「ぐうう……これまでか……」


 蔦が延びてオラフさんを拘束する。


「オラフ爺まで……」

「土属性の付与魔法まで付いているじゃないですか……。私、教えて貰っておりませんよ!」

「今度お教えしますよ……」

「でも、どうしてここまで育て上げたのですか?今回のサンドラちゃんの修行は、あまりにも過剰では?」

「ソフィア王女は、私がサンドラさんとの修行前、一週間でどれだけ強くすると言ったか覚えていますか?」

「ええ、確か『一週間で()()()()()()()()()()してみせる』って……まさかっ!?」


 聞いておいてなんだけど、良く覚えてるな……。


「気付きましたか?」

「なるほど、先程の回りくどい説明は、そういうことでしたか……」


 ソフィア王女がすっと立ち上がる。


 さっき僕は、敢えて『今回私とソフィアさんはサンドラさん側には参加しませんし、私はどちらの味方にもつきません』と言った。

 そこで約束したことは、僕がどちらの味方にもつかないこと、そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ふふ、いいでしょう……!全ては師匠の思いどおりに動いて差し上げますよ」


 あ、結構怒ってる……。

 これは後で謝っておかないとね……。


 ソフィア王女は杖を取り出し、サンドラさんと対峙した。


「おい!お前は参加しないと……」

「ソラ様は私がサンドラちゃん側につくのを禁止しただけです。あなた達の方につくことは禁止していませんよ」

「ソフィア……」


「もうなんでもいい、あの化け物を止めてくれ!」

「恋人相手に化け物呼ばわりなんて……。本来ならば助けたくもありませんけれど。サンドラちゃん、勝ち誇るには早いです。ハイエルフには、まだ私がおりましてよ!!」


 仁王立ちするソフィア王女。


「ちょーっと待ったーっ!」

「っ、誰だ!」

「間に合いましたね」


 そこには僕が事前に手紙で呼んでいた人の姿がいた。


「ル、ルシアお姉さまっ!?」

「廃嫡させられた私だけど、私だって……ハイエルフなんだから……!」


 ソフィア王女の前に来たのは、冒険者ギルドフィストリア支部でオフィーリアさんとともにギルドマスターを務める、ハイエルフのルシアさんだった。


「あの淫乱ダークエルフと乳くりあっていたのではないのですか……?」

「そっちこそ、私がいなくて寂しかったからって、ハーフエルフと乳くりあってたんでしょ?」

「失礼な!まだ乳くりあう前ですよっ!」


 つっこむところ、そこじゃないでしょ……。


「いいでしょう、二人まとめてかかってきなさい!」

「ソフィア、いくわよ!」

「私達ハイエルフの底力、見せてやりましょう!」

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