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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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閑話75 最終日

(たちばな)涼花(りょうか)視点】

「会長、ここにおられましたか」

「涼花さん」


 私が会長を探しにいくと、ご自身の教室にいた。


「……エレノア様もご一緒でしたか」

「そういうのはやめてくれ。というか、涼花君の方がボクより序列が高いのだから、本来であればボクの方が敬語を使うべきであるだろうに」

「真桜様がお生まれになられた今、私の序列に価値なんて何もありませんよ……。現役で女王候補筆頭であらせられるエレノア様こそ、価値のある御方です」


 そう言うとエレノア様は額に手を乗せてくしゃりと頭をかく。


「キミまでそんなことを言うのか……」


 ソフィア会長にも言われたのだろう。


 この世界には、暗黙の了解で序列というものがある。


 大聖女であるソラ様は神様の友人ではなく恋人候補であるため序列トップ。その扱いはエリス様と同等のものだ。

 次に歴順に第99代聖女サクラ様、第101代聖女真桜様と次ぐ。


 そこに次いで序列があるのは、聖女の家族。

 聖女の妻や夫、その次に子供、最後に孫の順に序列が高く、養子などはその次。以降は各国の王家、その下に貴族となる。

 第97代のジーナ様の妻ディアナ様、そして私の父上であるブルーム、ディアナ様の子サンドラ様に次ぎ私、そしてソラ様が取られている養子となる。


 それは当人達が意識するものではない。

 あくまでも席の座り順を考慮するときなどに配慮したり、様をつけるかどうかを考えたり、対立したときにどちらの意見を聞くか決めるくらいのものだ。

 要するに、当人達ではなく周囲の人達が知り気を遣うために考えられたものだ。

 

「それに、序列を問わず先輩は敬うものというのが第34代の夏目渚様の御言葉であり、私達聖女学園生のモットーですから。ましてや聖女様に届き得る才能を持つ天才となれば、尊敬して然るべきでは?」

「はっ、それは嫌味にしか聞こえないな」

「そんなつもりは……」

「ボクでは届かないのさ。上には上がいる」

「まさか、エレノア様もシエラ副会長に一目置いていたとは……」


 それを私が言うや否や、エレノア様は目を見開いて驚いた。


「なんだ、知らないのか君は。いつもシエラ君と一緒にいるから、てっきり知っているものと思っていたが」

「……いえ、ソラ様の弟子であることは知っておりますが」

「知らない者に話す程ボクは不義理ではないんでね。()()を大切にし、教えを請うといい。それがボクとしての最後のアドバイスさ。キミもあと一年しか彼女とは一緒にいられないのだから」


 会長も買っていると思っていたが、まさかこの天才ですらそう思うほどなのか……。

 確かに得意な戦闘分野は違うが、それ以外の事でも学べることは多いかもしれない。

 ()()を挟みたくないと思いシエラ君にはあまり自分から進んで接しにいくことは遠慮していたのだが、少しは歩み寄ってみてもいいのかもしれない。


「肝に銘じておきましょう。して、会長は何を?」

「生徒をね、見ていたのよ」


 ここは二階。

 窓越しには部活動をしている生徒達が見える。


「私はうまく出来たでしょうか?」


 一年前、前会長が私を指名して聖徒会に入ったとき、ソフィア会長は私に悩みを吐露してくれた。

 彼女は人の上に立つ自信がまだないと言っていた。

 次期女王候補としては致命的だが、彼女もまた変わろうとしていた。

 いつも余裕がありそうに見えるのは彼女なりの演技だったことは、私と三年生の人達くらいしか知らないことだ。


「大丈夫ですよ。ほら、聖徒会室に向かいますよ」

「あ、ちょっと……!」


 エレノア様が手を振っているのを横目に、会長を引っ張る。


 聖徒会室に着くと、皆がそろっていた。


「「「会長、今までお世話になりました!」」」


 今日は三年生の聖徒会としての最後の集まり。

 『皆でお送りをしよう』。

 私から提案したことだが、シエラ君がここにいないことだけが心残りだ。


 無事だと聞いてはいるが、重症だったらしい。

 ソラ様がついているのなら大丈夫だと思うが、彼女は人一倍心の傷を抱えていた。

 その傷をも抉られていないことを願うばかりだ。


「ライラ様、本当にお世話になりました」

「ありがとう。エルーシア、あとは任せたわ」

「はいっ……」


 同じ書記のエルーシア君がライラ様に花束を渡し、涙を浮かべる。

 私も会長に花束を渡す。


「会長がしてきたことは、決して間違いではありませんでしたよ」

「ええ。同じ施政者として、とても誇りに思いますわ!」

「会長といて、私も楽しかったよ!」

「涼花さん、リリエラさん、ミアさん……」


 少し涙を浮かべていた会長は、それを誤魔化そうと私に拳を向けてきた。

 とんと胸を軽く小突くその力は、今までで一番強く感じた。


「任せたわよ、新会長」


 なるほど、ソフィア会長が自信を失いかけていたのも頷ける。

 この会長という役職は、受け継がれていくもの。

 聖女様にご縁のあるこの学園の会長という立場こそ、重みのある役職はないのだろう。


「勿論です」


 私も、これから気を引き締めなければならないな……。

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