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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第284話 序列

 ケーキを囲んで食べていると、食堂に珍しい人が来た。


「あらあら、女の子だらけで両手に花ね」

「サクラさん!それに……」

「あー」

「か、かわ……!」


 僕に小さな手を伸ばす姿が、この世の者とは思えない愛嬌の塊。

 って、そういえばいつのまに生まれてたの!?


「おめでとうございます、サクラさん。いつ生まれたんですか?」

「三日前よ。これもあなたのおかげね、本当にありがとうソラちゃん。そして、誕生日おめでとう」


 これが、僕の守った命……。

 いろんな人たちから世界を救ってくれたと、命を救ってくれたといわれてきていたけれど、正直これまではあまり実感することはなかった。

 こうして新しく生まれてきてくれた命を見ると、あの時の急いで向かってよかったと心底思えてくる。


「ほら真桜(まお)、これが私たちの命の恩人、同じ聖女の(かなで)(そら)ちゃんよ」

「真桜ちゃん、初めまして。奏天です」


 僕が手を握ると、そっと握り返してくれる。


「あ、そうそうそういえば……セリーヌ!」

「は、はいぃ……!ただいまっ……!」


 サクラさんがそう言って呼んだのは、真桜ちゃんの専属メイドのセリーヌさん。


「サクラさん、それは?」

「ほら、ソラちゃんも見たことあるでしょ?」


 そこには50音の表が一枚にまとめられたA4サイズのプラスチックカード。


「まさか、生後3日で文字を……!?」

「いや、転生って話は聞いているでしょう?」

「え、もう引き継いでいるんですか!?」


 脳の発達もまだのはずなのに……。


「私も仕組みはよくわからないけど、安定して思考できるようになるまではエリスが仮の脳で補ってくれているそうよ」


 なんでもありじゃん。

 すごいな神様……。


「つまり、真桜ちゃんと会話ができるということですか?」

「そういうこと。しゃべれるようになるまではまだかかるから、それまではこれで会話するしかないわ」

「いや、赤ちゃんと会話できるだけでもすごいと思うんですけど……」

「だからソラちゃんの誕生日プレゼントの一つとして、真桜と会話する権利をあげるわ」

「はい、真桜様……」


 セリーヌさんが私に見えるように50音の表を見せてくれると、サクラさんにだっこされた真桜ちゃんが順番に指し示して文字をつくっていく。


 『お』…………『は』…………『と』……『の』『こ』ってえぇっ!?


 まさか、()()()……っ!?


「おはとのこ……?何それ?」


 サクラさんが聞き返す。


「真桜ちゃん……その話はっ!」


 0歳児に凄んでしまった。

 でも背に腹は代えられない。


「きゅ、急にどうしたのよ……ソラちゃん?」

「誰にもっ!絶対にっ!内緒ですっ!わ、私との約束ですよっ……!!」


 急にぽかんとした顔になる真桜ちゃん。

 僕がその話をしたがらないことに驚いているのだろうか?


 だが僕は地べたに這いつくばり首を垂れる。


「真桜ちゃん……お願いします。その話だけは、やめてください……」

「序列一位のソラ君が土下座してる……」

「つまり真桜様、序列一位……?」


 僕なんかの土下座や序列なんかでいいのならいくらでもあげるよ。

 今はそんなことより知れ渡ってはいけない黒歴史を何とかしないといけないのだ。


 土下座する僕に伸びてきた柔らかな手。

 動きはぎこちないけど、なでていることがなんとなくわかる。


 0歳児は首を横にゆっくりと振ると、続きを指し示してきた。


「ええと、『ち』……『が』……『う』……?」

「『た』『だ』『の』『ふ』『ぁ』『ん』……」


 そして、最後につづられたのは、『あ』『く』『し』『ゅ』だった。


 僕はその手を握ると、真桜ちゃんはにこりと笑ってくる。

 僕、この子にはかなわない気がする……。

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