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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第283話 花園

 最終日。


「はぁ、はぁ……もう一回よ……『巨木の蔦(ヒュージ・アイヴィ)』!!」


 大きな蔦が僕の周りの地面からにょきにょきと生え、僕を拘束しようと伸びてくる。


「リフレクトバリア」


 それを全て外側に跳ね返すと、リフレクトバリアの跳ね返すタイミングと()()()()()()()()でサンドラさんがステッキで殴ってくる。

 強制的にリフレクトバリアが失敗すると、バリアは壊れ、サンドラさんが二撃目の凪払いを放ってくる。

 ハイエルフはほぼ全員杖使いだから、その対策として僕は杖だけを使っている。

 流石に物理攻撃を杖で受けては杖が壊れてしまうので、僕は杖を左手から持ち変え、自身を強化して素手で受ける。


 パァン!と凄まじい音が鳴り、受けた左手が後方に追いやられる。


「レインアロー」


 そのまま右手の杖から放たれた光の槍の雨を受けきれずサンドラさんは受けとめたステッキとともに吹き飛ばされる。


「きゃあっ!?」


 僕はというと、ステッキを受け止めた左手がぷらぷらと垂れて使い物にならなくなっていた。


「まあ、及第点でしょうか」


 エリアヒールを使い、お互いの怪我を治す。


「や、やっと帰れるのね……。もう一生分のグミを食べた気がするわ……。しばらく食べたくないわ」

「でもまだグミは半分以上残ってるんですから、しばらく食べるんですよ」

「こんなに食べていたら虫歯になるわよ」

「虫歯菌を浄化しているから大丈夫ですよ」

「……。ソフィアが『鬼』と呼んでいた理由が、この七日間でよく解ったわ」


 そ、そんな……!?

 ソフィア王女は僕の修行の唯一の理解者だと思ってたのに……。




 ワープ陣で聖女院に帰ってくると、辺りはざわついていた。


「な、何かあったんですかね?」

「だから一度帰った方がいいって言ったのに……」

「ええと、サンドラさんは何があったかご存知なのですか?」


 僕がそう聞くと、サンドラさんはぽかんとしていた。


「あっきれたっ……!あんた、本当に分かってなかったの!?」

「えっ……なんの話ですか?」

「昨日は知ってて言っていると思ったから引き下がったのに、知らなかったのなら話は別よ」

「あの、サンドラさん……怒ってます?」

「当たり前よ!いいから来なさい!」


 僕はサンドラさんに手を取られ連れていかれる。


 廊下にいる人達はしきりに誰かを探しているようだ。

 彼らは、僕とすれ違うとみんなぎょっとした顔をしていた。


 ……もしかして、僕を探してる?




 連れていかれた先は、食堂。

 扉を空けると、シェフの人達のほかに、見知った人達がいた。


「まさか、本当に忘れてるなんて……」

「だから言ったんです。あのとき誰かが伝えておくべきだったって……」


 そこにいたのは、寮の皆だった。


「どうして皆さんがここに……?」

「ソラ様、寮の約束、破ったでしょう!」

「約束……?あっ……」


 僕、行き先を伝えるのを忘れてた……!


「すみません……」

「ほら、反省は後回し!1日遅れちゃったんだもの。盛大にやらないとね!」

「1日……?」

「「ソラ様、お誕生日おめでとうございます!」」


 あ、そうか……。

 昨日は3月20日、僕の誕生日だ。


「皆さん、ありがとうございます……」


 サンドラさん達のことに集中していて、誕生日だなんてことはすっかり頭から抜け落ちていた。

 昨日のサンドラさんとエリス様が帰らせたがっていたのは、これだったのか。


 確かに、サプライズなら明かすわけにはいかないよね。


「昨日はすみませんでした、サンドラさん……」

「本当よ!私が悪かったみたいで怖かったんだからっ!」


 深々と頭を下げる。

 早とちりとはいえ、エリス様にもきつくあたってしまった。

 あとできちんと謝らないと……。


「寮のみなさんで協力して飾りつけやご馳走の用意をしたんです」


 シェリーの言葉に、1日待たせてしまったことをとても後悔した。


「シェフ、イチオシ」


 力こぶを見せてくるソーニャさん。

 ソーニャさんが作ったのかな?


「さ、みんなで食べましょ」


 フローリアさんの号令とともに、席に座る皆。

 僕の席は、エレノアさんとエルーちゃんが座っていた。


「両手に"花"じゃないか、ソラ君」

「ソラ様も"花"ですよ、エレノア様」

「ははっ、それもそうだな!」


 ここは本来男子禁制の、聖女の花園。

 いつの間にか寂しさを感じるようになっていた僕にとって、この空間の姦しさに居心地がよくなってしまっていたのだった。

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