第267話 特待
ある日の放課後。
たまたま半日で解散の日だったんだけど、マリエッタ先生に引き留められてしまう。
「そういえばシエラさんっ、学園長が至急来て欲しいと仰っていましたよっ!」
そう言われていつものようにマリエッタ先生を職員室までだっこする。
「また無理難題を言われないといいんですけど……」
「シエラさんは優秀ですからっ、学園長もとても頼りにしているのだと思いますよっ!」
「物は言いようですね。先生の問題は先生で解決して欲しいんですけれども……」
「それはぐうの音もでない正論ですねっ……」
「ここでお別れですね」
僕が名残惜しくその尊き体を離す。
「あっ、このまま少し待って貰えますかっ?」
「はい」
数分待っていると、やがてガラガラと半分扉が開きマリエッタ先生が書類の束を持って出てきた。
「私も学園長に用事があるんですっ。なのでついでによろしくお願いしますねっ!」
それを抱っこすると、書類の分だけ重みが増すんだけどっ……!
「えへへっ!シエラさんは優しく抱っこしてくれるから大好きですよっ!」
シエラさん「は」って言った……。
それは日頃からみんなに抱っこされているということに他ならない。
ま、魔性の女……マリエッタ……!
「れっつごぉーっ!」
まあ、癒されるからヨシ。
「学園長、失礼します」
「いらっしゃいませ、お二人とも。そこの席に腰かけてください」
「学園長っ、言われた通りに持ってきましたがっ、本当にこれをやらせるんですかっ?」
「ええ。お願いします」
「?」
「シエラさんっ、これから抜き打ちテストを行いますっ!」
「……へ?」
言われるがままに渡されたテストを解く。
なんだか難しいと思ったら……これ、二年生の範囲じゃんか……!
それから戦闘実技以外の全9教科を解かされた。
もう辺りは暗くなっていた。
「流石に疲れました……」
「私が採点している間にっ、最後の試験受けてきてくださいっ!」
「ええっ!?戦闘実技もやるんですかっ!?」
「ほらっ、学園長が地下で待っていますからっ!早く行ってきてくださいっ!」
地下訓練場での学園長との戦闘は、流石に疲れていたため誰も見ていないことをいいことに最上級魔法で楽をさせて貰った。
「流石ですね。110点満点です」
そういえば学園長と実技すると10点貰えるんだっけ……。
学園長室に戻ると整えられた紙束にえっへんとどや顔しているマリエッタ先生の姿があった。
うん、この世界に来れて、本当によかった……。
「そっちはどうでしたかっ?」
「110点でした」
「じゃあ、合計はこれですっ!」
そこには、970と948と書かれていた。
「シエラさんがこんなに優秀だなんてっ、私は鼻が高いですっ!!」
「出題範囲の違う1000点満点のテスト二つ……。これはもしかして、今年度行った二年生の中間考査と期末考査のテストですか?」
「まさかっ、本当に知らなくてこんな点数を取ったんですかっ!?」
落としたのはほぼ3教科だけだ。
学園長の10点があるし、実際はもう少し落としている。
「いや、もう少し頑張れたとは思います。ちょっとこの点数は恥ずかしいです……」
ノー勉でいきなり出されたとは言うものの、実際は先行して勉強していたのだから割りと最近習った範囲とも言える。
ミスしたところもケアレスミスだから、尚更だ。
「いやいやっ!今年の二年生のトップは856点の涼花さんなんですよっ!?それを一年生のときに取るなんてっ、凄すぎますっ!」
「それで、どうしてこのテストを受けさせられたのですか?」
「これなら文句はないでしょう」
「なんの話です?」
「シエラさん、あなたには来年唯一の特待生となっていただきます」
「……へ?」




