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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第4章 一新紀元
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第25話 祝辞

「――新入生代表、シエラ・シュライヒ」


 拍手とともに礼をし、舞台脇に掃ける。


 風邪も治り、入学式も無事予定どおりに開催された。

 僕も陰ながら手伝った身として、無事に開催できることに嬉しさを感じ、不思議とスピーチには緊張しなかった。


「続きまして、在校生挨拶。在校生代表、ソフィア・ツェン・ハインリヒ」


 壇上にソフィア王女が向かう。


「新入生の皆様。ご入学、おめでとうございます。初代聖女様が創立されてから、計百代の聖女さまがこの聖女学園をお見守りくださいました」


 


「そして今年はトラブルに見舞われましたが、私達は大変幸運なことに、サクラ様とソラ様のお力添えによって、無事にこの入学式を開催することができました」


 えぇ……それ暴露されるの……?


「お二方には、新入生の皆様の制服を届けるためご助力いただきました。そして更にソラ様は、この多目的ホールを、シックで強固な新しい施設へと建て替えてくださいました」


 何だこの公開処刑……。




 そこで、後ろから急に声がした。


「シエラ様……。すみません、失礼します」


 え……ルークさんが何でここに……


「ちょ、ちょっとルークさん何す……」


 何度もごめんなさいと謝りながら、ルークさんは舞台裏の奥の部屋に連れ込むなり、僕を行きなり脱がせて礼服に着替えさせてきた。

 ……()()()()()()()()()

 ……聖女院のトップであるルークさんに命令できる人間は一人しかいない。


 犯人は分かった。でも、何をさせられるんだ……これは?


「――在校生代表、ソフィア・ツェン・ハインリヒ」


 着替えているうちに、いつの間にかソフィア王女の挨拶が終わっていた。


「続きまして、来賓祝辞。本日は今回ご活躍なされた百代目、大聖女ソラ様にお越しいただきました。」


 ……は!?ちょっ!?

 こんなのソフィア王女との打ち合わせの時にはなかった……。


「ソラ様……お願い……致します……」


 もの凄くつらそうな顔でルークさんが土下座をしてきた。

 ……あれが上からの命令を無視できず実行するも、胃が痛くなる管理職の姿だ……。

 苦労人には僕の分も幸せになってほしい……。

 ルークさんのせいというかおそらくサクラさんのせいなのだが、断る選択肢が消えてしまった……。


 きっと、この間の仕返しだろう。

 エルーちゃんだけでなく、サクラさんにも迷惑をかけたのは事実だ。ここは甘んじて受け入れよう。




 僕は先程と違う姿で舞台に戻ると、入学式にも関わらず黄色い声が聞こえてくる。




 どうしよう……祝辞なんて何も考えてないよ……。


「入学生の皆さん、父母の皆さん。ご入学、おめでとうございます。無事入学式を迎えられ嬉しく思います」




 僕も入学生の一人なんだけどね……。




「こんなことは入学式に言うことではないかもしれませんが、私は学校にいい思い出がありませんでした……。勉強をするのは好きでしたが、交友関係は壊滅的でした」




 ほんと、何言ってんだろうね。

 僕はアドリブは得意じゃないんだよ……。




「けれどこの学園を見て、少し考えは変わりました。私は初代聖女であるお祖母ちゃんが残したこの学園を、大切にしたいと思っています」




 このくらいは言っても大丈夫だよね。




「だから、私に学校の素晴らしさを教えてください。私が次に来たとき、入学生も在校生も先生も、誰一人欠けることなくみんなが笑顔でいられているような学園の姿を、私に見せてください。これが私から皆様に贈る言葉です」


 あ、そういえば締めの挨拶どうしよう……。

 



 僕はおもむろに杖を取り出し、"祝辞の魔法"を唱えることにした。


『――全てを包み込む光炎(こうえん)の花園よ』




 ついでだし、この多目的ホールも彩っておこう。




『今ひと度(われ)に力を貸し与えたまえ――』




『――フレア・サンフラワー――』




 光でできた大きなひまわりの花達が、多目的ホールの壁という壁からにょきにょきと生えてくる。


 ひまわりから天井や壁に向かって光が発せられると、聖女学園の制服にも描かれていた、高貴を表す白い百合の花が次々と壁や天井に描かれてゆく。


「これが……大聖女さまの魔法……」


 白い百合の花はレーザー光で焼きをいれて白くしているので、よほどのことがない限りは消えない絵として残るだろう。




 役目を終えた光のひまわり達は散り、光のシャワーを降らせた。


「綺麗……」




「この百合の花をもってして、お祝いの式辞とさせていただきます」




 盛大な拍手を背に、僕は舞台を後にした。






 去り際、舞台袖にいたソフィア王女とすれ違ったときに


「やはり大聖女さまは百合……」


 とよく分からないことを呟いていた。

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