第257話 教皇
「グギュルルル」
「ひ、ひいっ!」
「ダイジョウブ、ハープチャンコワクナイヨー」
「どうして片言なんですかぁっ!」
お約束だと思って……。
「本当に大丈夫だから、触ってみなよ」
幼女と龍の邂逅……。
僕がステラちゃんを抱き上げると、ステラちゃんは恐る恐るハープちゃんの体に触れる。
「わぁ!すべすべしてて、格好いいですねっ!」
「グルルル……」
「ひ、ひぃっ!」
「ハープちゃんに格好いいは禁句だよ」
軽く威嚇したハープちゃんをなだめる。
「それで、教皇龍様と闘うのですか?」
「ステラちゃんは今回の迷宮でレベルカンストしてるだろうから、そろそろ加護を強くしてもいいんじゃないかと思って」
「つまり、光の神獣であらせられる教皇龍様のご加護を賜ると?」
「うん。そうできればいいなとは思ってる」
「いいなって……そんな他人事な……」
「まあ、ただでくれるとは思ってないよ……」
前例がそうだったからね……。
「分かっているな!流石は我が主よ」
白き龍が光輝くと、やがて白い翼の生えた透き通る白髪の美しい女性が降りてきた。
それは真っ白というより、白と透明のグラデーションのようだった。
あれが、ハープちゃん……?
「どうした主?そんな面食らったようなを顔して……」
「い、いや……想像よりずっと綺麗なお姉さんが出てきたからびっくりしちゃって……」
「な゛っ……!?」
ボフッと顔を沸かすハープちゃん。
「でもこんなに美しくて素敵なのに、どうして今まで人化しなかったの?」
「な゛っ、な゛な゛な゛な゛っ!?」
一体どっから出てるのよ、その声……。
「ひ、人化したら……今までのように接してくれないと思ったのだ……」
「まあ確かに見方は少し変わるかもしれないけど、ハープちゃんはハープちゃんだよ」
「おいで」と声をかけると、ハープちゃんはそそそとすり寄ってくるので、わしゃわしゃと撫でた。
ういやつめ……。
「主、やはりたらしなところがあるな……」
「ええ、本当に……」
「いや、『この世の可愛いの代表』みたいな三人には言われたくないよ……」
「「「っ……!」」」
ぽぽぽっと、やかんが三つ沸いてしまった。
「こういうところですよ……」
「タチが悪い……」
事実を言っただけなんだけどな……。
「で、加護が欲しいと宣っているのは、そこのちんちくりんか?」
ちんちくりんて……。
「ちんちくりんじゃなくて、ステラですっ!」
「主、本当にこんなのに渡していいのか……?」
「試してみれば分かるよ」
「ならば、遠慮なくいくぞ!」
せかせかと杖を構えるステラちゃんに、ハープちゃんは両手の親指と人差し指をLの字にして平行四辺形の枠を作り、自分の顔の前に持っていくと、こう唱えた。
「リフレクション・バースト」




