第249話 放火
「ライト」
「「キーッ!キーッ!!キキーッ!!!」」
魔法で灯りをつけると、そこには群がる手の長い猿、猿、そして猿。
「あれは……?」
「あれがピエロザル。弥王が商人に持たされた、あの自爆玉を使う魔物だよ」
「つまり、弥陛下の自爆玉は、ここで生成されていたと……?」
「うん、そう考えるのが妥当だろうね」
ピエロザルは人型の魔族や魔物を上司に仕立て上げ、気を良くした上司からおこぼれをもらうことで生活をする奇妙な魔物。
逆に言えば、人型の魔族が近くにいなければピエロザルは生息していないということだ。
そんなピエロザルは本来見つけるのも大変なんだ。
それなのに、これだけ群れて生息している。
彼らはみんな一人の主に長期間群れているということだ。
「これだけ群れるということは、それだけ居心地が良い期間が長くなっていたということです。少なくとも、ここ5年以上は放置されていたということでしょう……」
「なっ、そんなにもですかっ!?」
ステラちゃんの声が洞窟内に響くと、やがて警戒していたピエロザルが飛びかかってくる。
「ここで余所見は厳禁だよ」
強化した腕で飛んできたピエロザルの顔面を抉るように殴り返すと、一撃で瀕死の状態になる。
「ギィーッ……」
瀕死になったピエロザルはすぐさま背中から自爆玉を取り出す。
バアゴオオォォンと大きな響きで爆発するさまは、手榴弾というよりガス爆発をさせたような規模。
「きゃあっ!?」
魔力がこもっているだけあって、爆発力は高い。
爆風が収まると、周りに居たピエロザルも巻き込まれて倒れていた。
「これがピエロザルの群れの倒しかただよ」
「そんな強引なっ……!」
「いや、普通そんなことをすれば天井が崩れますよ……」
確かに、リカバーありきの戦法ではあるけどね……。
「自爆で巻き込んだ分の経験値は、自爆したピエロザルを攻撃した人が得られるから、結構経験値稼げるんだ」
「……師匠がっ!血も涙もない人だというのはっ!!良く分かりましたっ!!!」
「いや私、この間あれに殺されかけているからね……?」
「「えっ?」」
あ、余計なこと言ったな……。
そういえば二人は知らないんだった。
「ど、どういうことですかっ!?」
「話している暇はないから、急ぐよ」
僕はステラちゃんを抱えると、そのままおんぶする。
「ど、どうして私を抱えるんですかっ!?」
「今から私が抱えて走るから、ステラちゃんはピエロザルをできるだけ瀕死にして爆発させていくんだよ」
「私を鬼にするつもりですかっ!!」
「鬼というか……放火魔?」
「鬼っ!放火魔っ!師匠っ!」
その掛け声、気に入ったの……?




