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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第245話 洗脳

 散らばって探し始めるが、僕たちは透明になっているので見つけるのは至難の業だろう。


「ふぅ……行きましたね」


 忍者の集う梛の国、獏がいるとはいえ油断ならないな……。


「すみません、まさかシエラ様が指名手配されるなんて……」

「いや、私がうまく立ち回れなかっただけです。それに、皆さんが指名手配されなかったのですから、上出来です」


 犠牲になるのなら、僕一人でいい。




「こっちです」


 庭園を抜け、施設の中に入る。


「皆さん、ここからはこれに履き替えてください」


 足音を消すアイテム『忍者の足袋』を全員に渡す。


「これはっ!?忍者ならば一度は夢見るという、伝説のクラフトアイテムではないですか!!」

「くんくん、これがシエラ様のおみあしのかほり……」

「いや、普通に新品だよ……」


 『忍者の足袋』に頬擦りする神流さんに、臭いをかごうとする忍さん。


「……」

「セラフィー様、どうかなさいましたか?」


 エルーちゃんの問いに、閉口していたセフィーがやがて口を開ける。


「……なんというかお義母様のご家族って、皆さん癖が強いですね……」

「……言わないで」


 ……悔しいけど、僕もそう思う。


「セフィーは、こうはならないでね……?」

「お義母様が一番癖が強いのですから、無理では?」

「ふぇ……」


 義娘(セフィー)が辛辣すぎてつらい。


「癖が強い……。確かに、癖の強い下半身をお持ちで……」


 忍さん、何言ってんの……?


「修行に関しては、師匠が一番頭おかしいですもんねぇ……」

「ステラちゃん、これが終わったらまた一緒に修行に行きましょうね……?」

「そ、その言葉が一番聞きたくなかったんですよぉ!!」


 にっこりと微笑むと、ステラちゃんはカタカタと震えだした。




「恐らくこの部屋で……いました。あれが樹村卿です」


 高そうな薄緑の着物にショートボブの髪型をしたお姉さんがそこにはいた。


「それで、会ってどうなさるのですか?」


 僕は「患グラス」で樹村さんを看る。


「嫌な予感が的中してしまいましたね……。ひとまず彼女を取り押さえてください」

「承知!」


 光の束縛(シャイニングバインド)使()()()()ため、嶺家のふたりに一斉に両肩を抱えてもらって、拘束した。


「っ!?何者っ!」


 僕はそのおでこをパシッと叩くと、僕は洗脳を解除するための光属性ではなく、無属性魔法を流した。


探知(ディテクション)!」


 洗脳魔法は、操っている者と魔力糸が必ず繋がっている。

 だから僕はあえてそれを解除せずに、追おうとした。


「っ!?」

「シエラ様!?」

「いや、大丈夫。向こうから洗脳を切られた。相手は狡猾のようだね……。ひとまず、樹村さんを治しましょう」


 ヒールと唱えると、樹村さんは正気を取り戻した。

 獏の透明化を解除する。


「樹村卿、ご無事ですか?」

「あなたは嶺の若頭……。私は、操られていたのですか……?」

「ええ、そのようです」

「失礼ですが、あなたは?」

「樹村卿、大聖女様の御前であらせられる」

「っ!?」


 すぐさま手慣れたような所作で土下座の耐性に入ると、ゆっくりと低頭した。


「た、大変失礼いたしました!私は梛の国宰相の冬子と申します」

「今はシエラとしてここに居るので、そういうのはよしてください……」

「御意に……」


 ああ、この人も苦労人だ……。


「それよりも、問題は操っていた魔族です」

「魔族……!?何者なのですか?」

「魔王四天王が一人、インキュバスです」

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