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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第31章 頽堕委靡
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第241話 魔族

 聖女院の客間に集まったのは、サクラさんと当事者である梛の国の面々。


「そんな……!」

「まさかあの樹村が謀叛を起こすなど……」


 王家は言い渡された事実に、混乱していた。


「情報は確かなのか?」

「はい。国内の人間から聞いた内容です」

「樹村さんとは、どういう方なのですか?」

「我が国の女宰相です。普段から接していてそんなことを考える輩ではないと思っていたのですが……」


 青葉王妃が僕にそう教えてくれた。


「樹村ちゃんは政治的に隠し事はしていたかもしれないけど、私が知る限りはそんな女性ではなかったはず……。ね、ねぇ、私が確認しに行くというのは……」


 サクラさんは今大事な時期でしょうに。


「却下です。ダメに決まっているでしょう?それに、私ほど今回の掃討の()()()はいないと思いますけど……」

「ソラ様、これは我が国の問題です。いくら大それた計画とはいえ、我が国の内乱は我が国で解決すべきかと」


 (わたる)王が物申すというように反論してきた。


「いえ、この件、予想が正しければおそらく魔物……つまり魔族が絡んでいるはずです……」


 魔物なら、僕の出番でいいだろう。


「その根拠は?」

「聖国のパーティーでバフォメットが出現した件、毒の輸出先が梛の国でした」

「っ!?」

「そして今回の弥王が狙われた時の自爆玉。あれは本来ピエロザルという魔物にしか作れないアイテムです」

「……なんですと……!?」


 そう、今回の肝は本来魔物しか生成できないアイテムを輸出しているということ。


「と、いうことはつまり……」

「ええ。魔物使い(テイマー)が魔物を使役(テイム)しているか、そもそも親玉が魔族か、ですね」

「まさかっ……!?」


 サクラさんが何かを察する。


「樹村ちゃんは()()、つまり……」


 僕と同じ領域まで来たようだ。


「あくまで可能性がある、というだけですけれど」

「そ、そうね……。()()()って、そういうこと……」


 ()女であり()である僕に、これほど適任ということはないだろう。


「だとしても、王家としてただ見ているわけには……」

「今回狙われているのはフィストリア含む王家です。敵地に自ら踏み込むのは悪手です。また次の刺客がやってこないとも限らないのですから、護衛の皆さんも今回は聖国に残り王家の方々を守るように備えておいてください」


 僕はそこまで話すと、一息ついてから続ける。


「ひとまず今回は私が一人で行きます」

「わ、私もお供させてください!」

「私も……。見てきたことを説明する人が必要です」


 またエレノアさんを助けたときみたいに一人で行こうとしたら、嶺家の二人の少女に止められた。


「……言い分はわかりました。とはいえ二人の実力は同世代と比べたらお強いのかもしれませんが、現状あまり信用できるレベルではないです」

「ど、どうしてですかっ!?」

「二人とも私の昏倒(ダザルメント)で倒れたんです。いくら獏で隠れられるからとはいえ、今回戦闘面であなたたちを頼ることはできないと思います」

「っ……」


 昏倒(ダザルメント)は無属性の初級魔法。

 いくら僕が廃人ステータスだったとしても、流石に初級魔法に耐性がない人の戦闘能力を信用しようというのは厳しい。

 迷宮探索なら守れるから問題ないけど、今回はいつ悪意が襲ってくるかわからないし、悪意が人か魔物かもわからない。


「それほどまでに強い魔族が現れる可能性があるということでしょうか?」


 忍さん、変な言動が多いと思っていたけど、頭がよく回る人だな……。


「はい。今回の事件、魔王の四天王が関わっている可能性があるかもしれません」

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