第233話 巫女
テオさんに案内されながら、僕たちはお参りを済ませる。
テオさんに倣って、僕も二礼二拍一礼をする。
今年もみんなと幸せに過ごせますように。
<大丈夫よ、私が必ず叶えて見せるわ!>
<僕のお願いだけ覗かないでくださいよ……。みんなの願いを聞いてあげてください>
神様本人がお願いを聞いているの、なんか面白いな……。
<だから聞いてあげてるのよ。みんなの願いはソラ君の幸せなんだってさ>
<ちょ、ちょっと……!他人のお願いを勝手に喋るのは駄目でしょう……>
う、嬉しいけどさ……。
<ソラ君は、もう少し自分が愛されていることを自覚すべきだわ>
<……ありがとうございます、エリス様>
僕は空に微笑む。
<ふぎゅうっ!?>
……最後の鳴き声みたいなの、何?
「流石、所作が手慣れていらっしゃいますね」
僕が日本人だからって言いたいの?
というかもう少しは隠す素振りをしてほしいもんだけど……。
「お父さん、どうしたの?その人達……」
境内を歩いていると、やがてエルフの巫女さんがやってきた。
テオさんのクリーム色に、オレンジのグラデーションメッシュのような長髪をしている。
僕より数歳年上のように見えるけど、相手はエルフなので正確な年はわかりようがないだろう。
「お客様ですよ。挨拶なさい」
「可愛い子達ね。聖国神社へようこそ。私はピア・ザビアー。ゼノン様の子孫よ。せっかくここに来たのだし、舞でも見たらどうかしら?」
「舞……?」
「ええ。じゃあ、準備があるからこれで」
ピアさんと名乗った女性は、手をひらりと一度反らすのを挨拶に去っていった。
テオさんに案内されて進むと、木造りの舞台が見えてくる。
「巫女舞は毎年祈祷や祈願の際に行っています。洗練された巫女の舞は神をも卸すと言われているのです」
足音もなく、ふわりと舞うピアさん。
ゆったりと、まるで一つ一つの動きが繋がっているかのようにも感じてしまう。
刀術の舞技に似ているようで、非なるものだ。
舞の真ん中を務めているピアさんは、その髪のグラデーションが揺れ、まるで目の前に虹が架かったかのようだ。
幾重にもなる「型」のようなものの繋ぎには、手に持つ鈴がしゃんと鳴り、祝福をお裾分けしているかのように感じる。
「初めて見るかい?巫女舞は」
お義父さんが僕に尋ねた。
「はい。ひとつひとつの動きが美しいのですね」
最後に中央に集まって幻想的な形を彩ると、舞は終わって拍手が起こる。
「綺麗でしたね……」
「左様……」
「えっ?」
僕の右隣にいるのはお義父さん。
お義父さんはそんな台詞は言わないはず……。
思わず左隣を見ると、僕と一緒に拍手をする男性がいた。
その足先から徐々に見やると、袴、小袖に羽織……。
嫌な予感がしたが、向こうが先に固まってしまい、僕は現実を受け入れざるを得なくなった。
「き、樹下さんっ!?」
「き、ききき貴殿はっ……!シエラ殿!!!!」




