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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第30章 相縁機縁
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第233話 巫女

 テオさんに案内されながら、僕たちはお参りを済ませる。


 テオさんに倣って、僕も二礼二拍一礼をする。


 今年もみんなと幸せに過ごせますように。


<大丈夫よ、私が必ず叶えて見せるわ!>

<僕のお願いだけ覗かないでくださいよ……。みんなの願いを聞いてあげてください>


 神様本人がお願いを聞いているの、なんか面白いな……。


<だから聞いてあげてるのよ。みんなの願いはソラ君の幸せなんだってさ>

<ちょ、ちょっと……!他人のお願いを勝手に喋るのは駄目でしょう……>


 う、嬉しいけどさ……。


<ソラ君は、もう少し自分が愛されていることを自覚すべきだわ>

<……ありがとうございます、エリス様>


 僕は空に微笑む。


<ふぎゅうっ!?>


 ……最後の鳴き声みたいなの、何?


「流石、所作が手慣れていらっしゃいますね」


 僕が日本人だからって言いたいの?

 というかもう少しは隠す素振りをしてほしいもんだけど……。




「お父さん、どうしたの?その人達……」


 境内を歩いていると、やがてエルフの巫女さんがやってきた。

 テオさんのクリーム色に、オレンジのグラデーションメッシュのような長髪をしている。

 僕より数歳年上のように見えるけど、相手はエルフなので正確な年はわかりようがないだろう。


「お客様ですよ。挨拶なさい」

「可愛い子達ね。聖国神社へようこそ。私はピア・ザビアー。ゼノン様の子孫よ。せっかくここに来たのだし、舞でも見たらどうかしら?」

「舞……?」

「ええ。じゃあ、準備があるからこれで」


 ピアさんと名乗った女性は、手をひらりと一度反らすのを挨拶に去っていった。




 テオさんに案内されて進むと、木造りの舞台が見えてくる。


「巫女舞は毎年祈祷や祈願の際に行っています。洗練された巫女の舞は神をも卸すと言われているのです」


 足音もなく、ふわりと舞うピアさん。

 ゆったりと、まるで一つ一つの動きが繋がっているかのようにも感じてしまう。

 刀術の舞技に似ているようで、非なるものだ。

 舞の真ん中を務めているピアさんは、その髪のグラデーションが揺れ、まるで目の前に虹が架かったかのようだ。


 幾重にもなる「型」のようなものの繋ぎには、手に持つ鈴がしゃんと鳴り、祝福をお裾分けしているかのように感じる。


「初めて見るかい?巫女舞は」


 お義父さんが僕に尋ねた。


「はい。ひとつひとつの動きが美しいのですね」


 最後に中央に集まって幻想的な形を彩ると、舞は終わって拍手が起こる。


「綺麗でしたね……」

「左様……」

「えっ?」


 僕の右隣にいるのはお義父さん。

 お義父さんはそんな台詞は言わないはず……。


 思わず左隣を見ると、僕と一緒に拍手をする男性がいた。

 その足先から徐々に見やると、袴、小袖に羽織……。


 嫌な予感がしたが、向こうが先に固まってしまい、僕は現実を受け入れざるを得なくなった。


「き、樹下さんっ!?」

「き、ききき貴殿はっ……!シエラ殿!!!!」

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