第232話 神社
翌朝。
シュライヒ家の皆で着物に着替えて南寄りの聖国神社へと向かった。
「お義母様、流石の着こなしです!」
「でも、この姿で行ったらまた騒ぎになるかな……?」
「ではシエラ様になればよろしいのではないでしょうか?」
「……」
僕はウィッグをつけて髪を揺らし整える。
「お久しぶりですね、シエラ様」
「改めて見ると、そのお姿も素敵ですね」
「なんというか今更な話なんですけど……家族の皆に見られながらウィッグ着けるの、恥ずかしいですね」
「恥じらってこそのシエラ様ですよ!」
相変わらず何言ってるのかわからないメルヴィナさん。
「ちょっと待ってってば!」
「シエラ様、早く早く!」
セフィー達と手を繋いで歩く。
「見えてきましたよ」
聖国神社は一本の巨木が立っており、その周りにできた神社。
エルフが神主や巫女さんをしており、巨木を守るとともにその維持費や種としての生活費を稼いでいる。
梓お姉ちゃんの次代である第93代聖女、ゼノン・ザビアーさんがエルフ好きで、「エルフに神主や巫女さんをやってほしい」という欲望丸出しの夢を叶えるために神社を立て、困窮していたとあるエルフ一家を養子に取り、その子孫に神社に働いて貰っているのだそうだ。
「セフィー!砂利道なんだから、走ると危ないよ!」
「おか……シエラ様、シェリー、早く早く!」
「ちょっと!よそ見しちゃ……」
「わあっ!?」
躓いて危うく倒れそうになるセフィーに肩を貸したのは、澄ました顔で高身長、そしてクリーム色の髪の長い男性。
「おっと、大丈夫ですか?ご令嬢……」
か、格好いい……!
なんだこの人、一つ一つの動作が絵になる……。
「あ、ありがとう……ございます」
あんなに元気なセフィーも思わずおとなしくなる程だ。
「この気……よもや高貴なるお方ではございませんか?」
えっ、嘘っ!?
ま、まさか……一瞬でバレた?
「ど、どうして……?」
「私はエルフの中でも特に『魔力感知』に優れていたものですから。ああいや、余計な詮索をするつもりはございません。ただ、これほどまでピリピリとした魔力を感じたことは今まで一度もありません。それこそ、サクラ様やアオイ様に引けを取らないような……」
思いっきしバレてるじゃん……。
同じクラスのノエルさんとかにはバレなかったから大丈夫だと思ってたんだけど。
「すみません、内緒にしていただけると……」
「無論です。私はテオ……ザビアーと申します。ここ聖国神社の神主をしております」
今、名字を名乗るのを躊躇ったね……?
なにもしていないのに向こうから特定されている証拠がどんどん沸いて出てくる……。
「明けましておめでとうございます。そして聖国神社へようこそ。皆様にエリス様の御加護があらんことを」




