第228話 血縁
「ソラ君!」
お義父さんとお義母さんは僕たちが居間に来てすぐに来てくれた。
「お義父さん、お義母さん、明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとう。それより、体は大丈夫なのかい?」
「今は大丈夫です。先に二人について紹介させてください」
バトンをシェリー達に渡す。
意気込んで挨拶を始めた。
「ソラ様の義娘のシェリルです。シェリーとお呼びください、おじいさま、おばあさま」
「セラフィーです。どうかセフィーとお呼びください」
「シェリーとセフィーだね。よろしくね」
「私にもついに孫ができたのね!嬉しいわ!」
お義母さんはひしっと二人を抱きしめた。
「ルークは孫どころか、恋人も作らないんだもの……。ルークの子なんて待っていたら、私が先に召されてしまうわ……」
ルークさん、頭もよくて顔もよくて物腰も柔らかくて、女性からあんなに人気なのに……。
「ルークさんはそんなに歳を召しているわけじゃないと思うんですが……」
「それでも、この世界基準では遅すぎるわよ。ソラ君が来る前なんて、『仕事が恋人』みたいなこと言っていたのよ?」
ええ……?
この世界では僕は既に成人らしいし、価値観が違うんだろうか……?
「ルークの話は置いといて、ソラ君のこと……聞いてもいいかい?」
「はい……情けない話で申し訳ないですが……」
僕は僕の前の家族のこと、そして僕が寝込んでいたことを話した。
静かに聞いていた義娘達も、目を閉じて聞いていたお義父さんとお義母さんも、僕の話が終わるにつれて表情が険しくなっていった。
「……そうか、聞かせてくれてありがとう」
「ソラ君っ……!」
「ソラ様っ!」
お義母さんが僕の顔に抱きつき、シェリーとセフィーが僕の膝元に寄り添った。
「お、おかあはん……」
「大変だったでしょう?」
「僕は……ただの怖がりだったんです。向こうで一番弱かった僕には、お父さんみたいに家庭を壊すなんてできませんでした。もちろん、そんな権利もなかったんですけど。その地位にいながら何も変わろうとしなかったのは、ただの臆病者だからだと思います」
「でも、お義母様は、私達に手を差しのべてくださいました」
「それにソラ君は、魔王から私達を助けてくれた。ソラ君は、こちらに来てから変わろうとしたんじゃないかい?」
「っ……そ、れはわかりません……」
あの時は必死だった。
まるで演劇の時に後輩の女の子を庇ったときみたいに、自然と体が動いただけなんだ。
「じゃあソラ君は、とんだお人好しだね!」
「えっ?」
それを聞いたお義母さんがうふふと笑う。
「ソラ様、シュライヒ家は他の貴族からなんと言われているか、知っていますか?」
「いいえ……」
「『お人好しの茶畑貴族』ですよ」
「っ!」
メルヴィナさんに言われて、やっとわかった。
「ソラ君も、私達の仲間入りだね」
「それっ、褒め言葉なんですかっ……?」
血が繋がっていなくとも、心が繋がっていればそれでいい。
そこから先はぼやけた視界で何も見えなかったけど、どうしてか心はぽかぽかで温かかった。




