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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第29章 雨露霜雪
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第228話 血縁

「ソラ君!」


 お義父さんとお義母さんは僕たちが居間に来てすぐに来てくれた。


「お義父さん、お義母さん、明けましておめでとうございます」

「明けましておめでとう。それより、体は大丈夫なのかい?」

「今は大丈夫です。先に二人について紹介させてください」


 バトンをシェリー達に渡す。

 意気込んで挨拶を始めた。


「ソラ様の義娘のシェリルです。シェリーとお呼びください、おじいさま、おばあさま」

「セラフィーです。どうかセフィーとお呼びください」

「シェリーとセフィーだね。よろしくね」

「私にもついに孫ができたのね!嬉しいわ!」


 お義母さんはひしっと二人を抱きしめた。


「ルークは孫どころか、恋人も作らないんだもの……。ルークの子なんて待っていたら、私が先に召されてしまうわ……」


 ルークさん、頭もよくて顔もよくて物腰も柔らかくて、女性からあんなに人気なのに……。


「ルークさんはそんなに歳を召しているわけじゃないと思うんですが……」

「それでも、この世界基準では遅すぎるわよ。ソラ君が来る前なんて、『仕事が恋人』みたいなこと言っていたのよ?」


 ええ……?

 この世界では僕は既に成人らしいし、価値観が違うんだろうか……?


「ルークの話は置いといて、ソラ君のこと……聞いてもいいかい?」

「はい……情けない話で申し訳ないですが……」




 僕は僕の前の家族のこと、そして僕が寝込んでいたことを話した。

 静かに聞いていた義娘達も、目を閉じて聞いていたお義父さんとお義母さんも、僕の話が終わるにつれて表情が険しくなっていった。


「……そうか、聞かせてくれてありがとう」

「ソラ君っ……!」

「ソラ様っ!」


 お義母さんが僕の顔に抱きつき、シェリーとセフィーが僕の膝元に寄り添った。


「お、おかあはん……」

「大変だったでしょう?」

「僕は……ただの怖がりだったんです。向こうで一番弱かった僕には、お父さんみたいに家庭を壊すなんてできませんでした。もちろん、そんな権利もなかったんですけど。その地位にいながら何も変わろうとしなかったのは、ただの臆病者だからだと思います」

「でも、お義母様は、私達に手を差しのべてくださいました」

「それにソラ君は、魔王から私達を助けてくれた。ソラ君は、こちらに来てから変わろうとしたんじゃないかい?」

「っ……そ、れはわかりません……」


 あの時は必死だった。

 まるで演劇の時に後輩の女の子を庇ったときみたいに、自然と体が動いただけなんだ。


「じゃあソラ君は、とんだお人好しだね!」

「えっ?」


 それを聞いたお義母さんがうふふと笑う。


「ソラ様、シュライヒ家は他の貴族からなんと言われているか、知っていますか?」

「いいえ……」

「『お人好しの茶畑貴族』ですよ」

「っ!」


 メルヴィナさんに言われて、やっとわかった。


「ソラ君も、私達の仲間入りだね」

「それっ、褒め言葉なんですかっ……?」


 血が繋がっていなくとも、心が繋がっていればそれでいい。

 そこから先はぼやけた視界で何も見えなかったけど、どうしてか心はぽかぽかで温かかった。

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