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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第28章 修身斉家
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第220話 結託

<ソラ君!?大丈夫?>


「かはっ……」


 お腹がへこんでしまって、普通ならどうしようもない。


「リカバー……」


 カンストしていて良かった。

 お腹は元に戻っていく。


「大丈夫です……。ハイヒール」


 大丈夫。

 あの頃に比べればこれくらいなんてことない。

 口の中がどろっとしていて気持ち悪く、プッと唾を吐くと血が溜まっていたようだ。


<もうっ……心配かけないで>

<すみません……>


 皆のもとに戻る。


「ソラ様!」

「ソラちゃん!」

「自爆玉を防ごうと思ったことはなかったんですが、案外防げば生き残るものですね……」


 爆発する直前、自分と自爆玉との間に身体強化で魔法の壁空間を作っていた。

 体が凹む程度で済んだのはそのお陰だろう。


「あなた、死ぬつもりだったの……?」

「流石に今は死ぬのは怖いですよ」


 幸せなことを知ってしまったからね。


「もう、あなたにまで先立たれたら私は文句言ってやるんだから……!」

「ふふ、珍しいこともあるものですね」

「ソラちゃん!」


 振りかぶった手から身を庇うように手で遮ると、サクラさんから叩かれることはなかった。


「ヒール」

「えっ……」

「手、忘れてるわよ。()()()()()()()()、傷なんてダメよ」

「うっ……。ご、ごめんなさい」


 こういう心配されるの、あまり慣れてないから苦手なんだよな……。


「それより弥さん、流石に今のは心優しいソラちゃんは許したとしても、私が許さないわよ」

「……承知しております。罰はいかようにも」

「弥さんも被害者だと思いますよ。あれは『自爆玉』。空気に触れると回りを全て巻き込んで爆発するというものです」


 ゲームでは良くお世話になったけど、今となっては危険なものだ。

 普通は使った人も巻き込まれて死ぬ。


「それを弥さんに渡してきたということは……」

「つまり、王家と嶺家を両方消す気だったと……?」

「おそらくそうでしょうね。神流さん、あなたは誰の命令でここに来ましたか?」

「……お父様です」

「私が聞いても答えなかったのに……」

「我が一族にとって、ソラ様は特別なんです。楓様はお隠れになられる間際まで心配されていた方ですから……」

「そっか、二人の家族はお祖母ちゃんのことを支えてくれたんですよね。二人とも、ありがとうございます」

「「ふぁ……」」


 僕が撫でると、おとなしくなってくれる。


「それはさておき、神流さんのお父さんが商人と結託しているか、弱みを握られているかの可能性は高いと思いますね」

「その上ソラ様にまで……到底許せませんね」

 

 不穏な空気になったので、空気を変えようとガラス戸をリカバーで直す。


「この中で他に手懸かりを持つ人は?」

「……」


 返答はない。


「なら、帰国まで一旦保留にしましょう。ただし、今日起こったことはここにいる人だけの内密にしておいてください。もしどこかに漏れたとしたら、ここにいる全員を疑います。いいですね?」

「はい……」


 僕は話を終えると、神流さんに向き合う。


「それで、貴女たちはどうするつもりですか?」

「私はソラ様の命に従います」

「それでいいのですか?」

「ソラ様の命は絶対です。それで父上の命を破ることは致し方ありません。それは我が一族、保守派も血族派も変わりません」


 どちらもルーツがお祖母ちゃんだからだろうか。


「……私は、貴女達をどちらも家族だと思っています」

「「ソラ様……」」

「私を向かえてくれた嶺家の家族を、今度は守りたいんです。そのための協力をお二人と、杏さんにはお願いしたいのです」

「何なりと!」

『――幻影を照らす寡黙なる聖獣よ、今ひと度(われ)に力を貸し与えたまえ――』

「こ、これはっ!?」

『――顕現せよ、聖獣(バク)――』


 トントンと床を叩いて魔法陣から獏を出す。


「獏、お願い」


 獏は二人に加護を与えてくれた。


「獏とワープ陣を貸します。これで絶対に尻尾を掴まれないように出来るはずです」

「……!?」

「商人のできる限りのことを調べてください。ただし、手は出さずに調べるだけにとどめてください」

「承知!」

「はっ!」

「御心のままに……」

「私達嶺家を敵に回したことを、後悔させてやりましょう」

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