第219話 自爆
「神流、やはりこうなったか……」
「…………」
やはり?
王家は知っていたの?
「ルーク殿より伺いました。この度は我が子静馬をお救いくださり誠にありがとうございます」
「ほら、岬も……」
二人に続いて、岬ちゃんも頭を下げる。
「いえ、それより聞かせてくださいますか?」
「はい。半年ほど前、私はとある商人と会ったのです。その商人は顔を隠しておりましたが、悉く情報を早く、正確に持って来る、そんな商人です」
「商人の名は?」
「蜻蛉と名乗っておりました。彼はこちらに来る前日に、王家が嶺家の保守派から狙われていることを私に教えたのです」
「そんなっ!?本家の情報が、漏れるはずがありませんっ!」
えっ……?
「どうして、その情報を事前に共有してくれなかったんですか?」
「これは私の国でのことですから、聖女様のお手を煩わせることではないと……」
「どうせ揉み消したかったのでしょう?けど、厄介事を話さない方が聖女の不審を買うことになることをそろそろ分かって欲しいのだけれど。それにあなた達は聖女院への不正侵入を促した、いわば共犯となっていることを理解して頂戴ね」
「……承知しております」
普通の考えだとそうなるよね……。
ましてや今妊娠中のサクラさんはお腹の子を守るため、そういうことには敏感になっているだろう。
もし静馬王子ではなく、狙われていたのがサクラさんだったらと思うと、怖くて仕方ない。
「話を戻しますが、彼はそう忠告した上で、私に対策を渡してきたのです」
「対策……?」
弥王が懐から布に巻かれた球体を取り出す。
「それは?」
「『布から取り出して、相手に投げつけるだけでいい』と言われました。」
ん……?
なんか急に胡散臭くなったな……。
「そんな投げるだけでいいアイテムなんて、ありましたかね……?」
僕はサクラさんに確認するように、そう聞きながら受け取った球体の布をはらりと取り除いた。
取り出した緑色の球体が白く輝きだすと、僕はその存在をようやく思い出した。
「しまっ……」
これは、『爆裂玉』、通称『自爆玉』だ。
まずいっ!?
どこかに投げようと思ったけど、四方八方に人がいるここじゃどこに投げても、全員死んでしまう。
光が強くなる中、僕は身体強化で飛び上がってガラスを突き破り、一人外に出た。
「ソラちゃん!?」
ここが三階であるというのが最悪だ。
最上階なら空に投げればだれもいないけど、ここの窓はただの城のど真ん中。
ここからガラスの外に投げただけでは、爆風に他の部屋の人が巻き込まれるだけだ。
「まあ、仕方ないよね」
僕はそのまま自分の体にそれを抱えたまま、自分の体に最大強化を施した。
普段なら迷わずに何の強化もせずに使う自爆玉なのに、わざわざ強化をして使うなんてと思い、少しおかしく感じてしまった。
ボフッという音が聞こえてきたと同時に鈍器で全体を殴られたような感覚を感じた。
「ソラちゃん!!」




