第218話 日夜
「ソラ様……」
「起きましたね。身体は大丈夫ですか?」
「身体……」
何故か光の束縛で身体を拘束された忍さんはもがく素振りを見せる。
「きゃー。ソラ様に縛り付けにされて、凌辱されるー」
「……」
「こういうのはお気に召しませんでしたか……。失礼しました」
恥ずかしげもなく棒読みでそんなこと言われても……。
忍さんって大分不思議ちゃんなのかな?
「忍、もう取り繕っても遅いわ」
「すみません、サクラ様……。任務失敗してしまいました」
えっ……今ので取り繕おうとしていたの……?
「ソラ様……お初にお目にかかります。嶺忍と申します。聖女様を御守りする聖影として日夜護衛をしております」
「ええ、よろし……ん?」
日夜……護衛?
「護衛ということは、普段から近くで見ていたと?」
「はい。ソラ様の身に危険がないよう、それはもう隅々まで……」
なんかねっとりとした声になってるのはどうして?
「……日夜というのは?」
「おはようからお休みまで、トイレからお風呂まで……」
「ぶっ!?」
僕のっ!プライベートはっ!!いずこへ!!!
「健やかなるときも、病めるときも……」
「結婚式じゃないんだからっ!?というか、忍さん、私のこと全部知って……」
こくりと頷く忍さんに、身の危険を感じて体を守る僕。
「大丈夫ですよ。私はソラ様の全てを受け入れて、ソラ様と繋がるためだけに生まれてきたのですから……」
「えっ……」
「言葉の通りですよ」
影からすぅっと現れたのは、忍装束に身を包んだ髪の長い大人の女性。
「出たわね、天才痴女忍者……」
なんだそのあだ名……。
「私は嶺杏、忍の母親です。いつも忍がお世話になっております」
胸やお尻の布地のポジションを直す仕草は何か意図的なものを感じる。
「うふふ……ソラ様、年上はどうですか?」
「いや、あなた人妻でしょう?」
「そんなこと、ソラ様にとっては些細なことです」
些細なわけないでしょ……。
「本当に些細ですよ」
何故か娘の忍さんが反論してくる。
「現存する楓様の血縁者がいる以上、それは何よりも優先すべきことですから」
「むしろ私達は一度それをされた側ですからね……」
「えっ……」
梓お姉ちゃんのときもそうだったってこと……?
「嘘でしょっ……!?」
「あなたの身内でしょ?早くなんとかしなさい」
「本当にすみません……」
ど、どうして僕の身内はこんなのばっかりなんだ……。
「ちょ、ちょっと待ってください!嶺家……というか二つの派閥のルーツは分かりましたが、ではどうして今仲違いのようなことをしているのですか?」
「それは私達の方から説明させていただきます」
「弥さん!青葉さん!」
梛の国の王家が、ルークさんと一緒に部屋に入ってきた。




