第215話 裏方
「どうしてお兄ちゃんが倒れてるのよ!?貴女、まさか……」
「私はいさかいを止めただけです。それより、この人達は誰ですか?忍者なら貴女の国の人達のはずですよね?」
「何よっ……?片方はあんたのとこのじゃないっ!?話をそらさないで!樹下お兄ちゃんがどうしてこうなっているの?」
「僕のとこの」って、どういうこと?
「ソラ様、ひとまず状況をお分かりの範囲でご教示いただけませんか?」
アレンさんが冷静でいてくれて助かる。
「大きな物音がしたのでこちらに来てみたら、忍者の人達と東国の護衛の方々が戦っていたんです。どちらが悪なのか分からないですが争いは止めたかったので、申し訳なかったですがひとまず皆昏倒させました」
「なるほど、一旦場を沈められたと……」
「眠らせる前に夏樹さんが私に言ったんです。奥にもいる、と……」
「っ!?」
僕が指を指した先には静馬くんが眠っている部屋。
それで意味が分かったのだろう。
「し、静馬はっ!?」
「落ち着いてください。彼は普通に寝ています。中にはこの二人の忍者の方がいましたが、何かされる前だったので止めました」
「よ、よかった……!」
岬ちゃんはその言葉に安堵したようで、敵意をおさめてくれた。
「あ、ありがと……。礼だけは言っておくわ……」
「こっちは仔細を答えました。今度は私から質問させてください。この人達はルークさんから貰っていた五国会議の参加者には書かれていませんでした。聖女院は基本的に顔を隠すことは禁じられているはずなので皆さんの顔はよく覚えていますが、この人達の顔は知りません」
「まず、この人達は侵入者ってことで合っていますか?」
「ええ、半分は正解よ」
「は、半分は……?」
意味が分からない。
「本当に知らないの?呆れた……。そんなんでよく聖女を名乗っていられるわね」
そ、そんなに罵倒されるほどなの……?
「岬殿、いくら王家とはいえ侮辱にあたるのは許されない。だが、二人は誤解していることがあります。まずはそれを訂正させていただきたい」
「「誤解……?」」
「『聖影』の存在を知らせなかったのは、他でもないサクラの計画でしたから」
どうしてここでサクラさんが……?
それにせいえいってなんだ?
「ああ、そういうこと。でも汚れ仕事をやっているものを見せないなんて、サクラ様は教育方針を間違っていると思うわ」
汚れ仕事……。
つまり聖女院には裏方がいて、それをサクラさんが知らせなかった……?
「教育方針ではありませんよ。それだけの話なら、サクラは伝えていたでしょう。以前サクラのお告げで触れた初代聖女様が関係しているのですから、サクラも隠していたのです」
「ああ、なるほどね……」
「お、おばあちゃん?どういうことです!?」
僕には話がさっぱり見えない。
「よくお聞きください、ソラ様。このくノ一二人の名前は、嶺忍さんと嶺神流さん」
「っ!?」
「二人とも、東国・嶺家の忍です」




