第213話 神聖
ハインリヒ家が最後に現れ、僕たちに挨拶をしてくれた。
「ソラ様、娘がいつもお世話になっております」
「そんな、ファルスさん、顔を上げてください。お世話になっているのは私のほうですから」
「お父様、なんですかその挨拶は……。仰々しいのはあまり得意ではないのですとあれだけ言ったじゃありませんか」
「し、しかし……」
「ええと、それより……」
ソフィア王女の隣にいる顔がきつめの格好いいハイエルフのお兄さんが気になった。
「そうですね、紹介します。私の婚約者のアークです」
「お初にお目にかかります、大聖女様。私はアークと申します」
「初めまして、アークさん」
手の甲に口づけをしてくる。
ハイエルフは聖女を神聖視しているとルークさんから聞いたけど、本当みたいだな。
僕だけでなく、サクラさんにもしているところを見ると、その盲信さが窺える。
「もう皆様と挨拶は終えましたか?」
「はい。ひとまず一通りは」
「では食事といきましょう。隣の部屋で準備はできております」
「エレノアさん、まさか貴女と一緒に五国会議に参加することになるとは思いませんでしたよ」
「それはボクも思っているさ。まあ元から王家ではあったけどね。ソラ君のせいだな、きっと」
ボクの目の前で言わないでよ……。
「まあソラ様はわりと無自覚で人をお救いになりますからね。私は私にはないものを持つ貴女が羨ましいですわ。ソラ様とお友達で、私よりも成績が良くて……。挙げるとキリがないですけれど」
「私はソフィア王女ともお友達のつもりだったのですが……。も、もしかして……迷惑でしたか?」
「そ、そんなことはありませんわ!うふふ、今日は記念日です♪」
握手を求めるソフィア王女。
「ソラ君、あまり軽々しく言わない方がいいと思うよ……」
「そんなつもりはないですよ。ソフィア王女の人となりは知っていますし、一緒に修行しましたからね」
同じ釜の飯を食った仲みたいなものだ。
「それなら王女なんて言わずに、ソフィアとお呼びください」
「それはちょっと距離詰めすぎのような……。それに年上は敬う主義なので、せめて『ソフィアさん』で……」
「あら?その認識でいくなら、『サクラさん』はおかしいのでは?」
「いや、向こうではサクラさんより年上だったかもしれないですが、こっちでは年下なんだからいいでしょう……」
最早揚げ足なのかもわからないよ。




