第203話 金銭
最初は慎重になっていたセフィーも段々と大胆に行動できるようになってきた。
恥ずかしがらずに大胆になることは戦闘において大事なことだ。
「じゃあ、次は一人で倒してみようか」
「えっ、ええっ!?」
「大丈夫、もう既にここの敵を倒すレベルには達しているから」
「それって、ギリギリで倒せるレベルではないですよね……?」
「義娘を危険に遇わせるわけにはいかないからね。これでも大分甘めに見積もっているんだよ?」
「ソラ様がお優しいなんて……。これが娘補正……」
「明日は雨でしょうか……?」
僕の味方はいなかった……。
「来たよ!」
「はいっ!」
ブレスを上に躱す。
アクアクリスタルタートルは甲羅が結晶石におおわれているせいで、首があまり曲がらず、細かな首の動きができない。
左右に振れるようだけど、上に曲がらないのは致命的で弱点だ。
「これが私の本気です!」
そのまま重力に身を任せて拳を放つと背中からパッカリ割れる。
「やりました!」
「この調子でいこう!」
「はいっ!」
「そういえば、ドロップ品をさっきから無視していますが、あのアクアクリスタル、売ったら相当な値段になると思うんですけど……」
「……えっ、そうなの?」
「……えっ?」
「ごめん、売ったことないから分からない」
それを聞いた途端、皆の顔が変わった。
「今すぐ見つかるだけ集めますよ!ここは宝の山です!」
「お金に目がない王女様……」
「王家も財源の確保には毎年困っているのです。あのお人好し王族のせいで、毎年五国会議で辛酸を嘗めさせられているのですから!」
「王族も大変なんなんですね……」
「何言ってるんですか!ソラ様もご協力ください!」
相当困ってるんだな……。
「いや、私はパスです」
「パスって……」
「いや、集められないんですよ」
「どういうことです?集められないとは!」
問い詰めるソフィア会長。
お金のことになると結構強気だな……。
「もうアイテムボックスのアクアクリスタルは999個でカンストしてしまっているので……」
「……アクアクリスタルは一つあたりおよそ聖貨1枚ですよ」
「えっ……!?」
集めるのはやめずに、手を動かしながら教えてくれた。
確か白金貨一枚がおよそ10万円として、それが100枚集まると聖貨1枚になる計算だったはず。
「一個、いっせんまんえん……!?」
僕、これだけで100億近く持ってるの……?
「ほ、ほらアイテム袋をあげますから。これにしまっておいてください。私の分は要らないですから、三人で分けてください」
「近所の気の良いおばちゃんの感覚でとんでもないもの渡さないでくださいよ……」
「お義母様といると、金銭感覚が狂ってきそうですね……」
僕もそう思えてきた……。
「増えてきましたね……」
5匹くらいの塊でやってくることが増えてきた。
「こんなのはまだ序の口ですよ。それに、アクアクリスタルタートルは経験値こそ少し良いくらいですが、あまりうまみはないんですよね……」
「いや、お金のうまみはあるはずなんですが……」
「それも多分これから感覚が変わると思いますよ」
「えっ」
次に来た団体さんは、中央に藍色の輝きを持つ竜が佇んでいた。
「お出ましだよ、本命が……。あれがブルーサファイアドラゴンです」




