第199話 鳳凰
「神獣……」
「鳳凰様……?」
まさか、こんなところで神獣の名前が出てくるとは思わなかった。
「ソラ様、神獣様とは一体……」
「聖女様が召喚なさる聖獣様とは違うのですか?」
ああ、その説明が必要なのか……。
「神獣は、本来聖女でも召喚できないエリス様が作られた神格のある獣達です。確か神様……多分エリス様が神獣を作り、神獣が聖獣を作ったとか」
「本来……?お義母様は召喚できる神獣様がいらっしゃるのですか?」
「ええと、聖女はエリス様の光属性の加護のおかげで光の神獣だけは召喚できるようになってるんですよ。ほら、多分お二人とも見たことがあると思いますよ」
「ま、まさか……」
「ええ。神獣教皇龍は光の神獣と呼ばれています」
「……ソラ様は教皇龍様を普段乗り物みたく使っていらっしゃいましたが……」
「ハープちゃんの扱いが酷いとか言わないで……!ええと、ほら!しばらく呼ばないとちょっと寂しそうな顔をするから、なんだか放っておけなくて……」
「なんだかペットのような扱いをされていません……?」
「あんなに格好いいのに……」
「ソンナコトナイヨ……。それに、ハープちゃんは女の子だから、格好いいって言うとちょっと怒るんだよ。凛々しいって言ってあげるのが良いと思うよ」
「えっ!?そうだったんですか!?」
「なるほど、教皇龍様も百合……。ソラ様は教皇龍様の悦ばせ方もご存じなのですね」
言い方よ……。
「この、七属性魔法というのはどういうものなんでしょうか?」
「シュネーヴァイス様も七属性魔法を使われるのですか?」
「七属性は全員が使える無属性の他に土、光、闇、火、水、風、雷の全属性使えるということです。ヴァイスに関してはただ全属性の単体魔法と二属性の合成魔法を使える聖獣というだけですね」
「文献にはありませんでしたが、シュネーヴァイス様は聖獣様のお一人なのですね」
「というだけって……大分ソラ様の感覚がおかしいと思うのですが……」
「鳳凰となると三属性以上の合成や追加で凄いことができますから」
「凄いこと?」
「ええ。せっかくですし、当事者に来ていただきましょうか」
「ま、まさか……」
『――七彩を照らす精霊の女王よ、今ひと度吾に力を貸し与えたまえ――』
上向きに空中をトンと杖で叩くと、僕の頭上に魔法陣が現れる。
『――顕現せよ、聖獣シュネーヴァイス――』
その魔法陣から地にヴァイスは降りてくるも、横になって寝ていた。
「……んあ?なんじゃ?」
「色々と台無しだよ、ヴァイス……」
せっかく天から降臨する演出で格好いい登場をさせようと思ったのに……。
「精霊女王様、お久しぶりです」
「ふあ~ぁ。なんじゃ、ソラにファルスのとこの娘じゃないかえ?」
「紹介するよ。私の義娘のセラフィー」
「なんじゃソラ、お主もう子を成していたのかえ?それもこんなに立派な子を……」
「いや、義理の娘の方だよ。同い年だし、明らかにおかしいでしょ……」
それに僕は産めないってば……。
「っ……!?」
そのままセラフィーの姿を見たヴァイスは驚きのあまり顔が固まった。
「使徒様!?」
「……しとさま?」
「この輝き、間違いない!ああ使徒様、お会いしとうございました!」
「ヴァイスが敬語使ってるところなんて初めて見た……」
「失敬な!余だって神様や大天使様、主様含め神獣様方には敬語くらい使うわい!」
主様って、鳳凰のことだよね?
「でも鳳凰から作られたヴァイスと鳳凰の加護の持ち主って、与えられた者同士、立場は同じなんじゃないの?」
「んなわけあるかっ!?加護はいわばその者を認め、対等な立場になりたくて与えるものなんじゃ!主様と対等な立場の使徒様と主様に作られた余が同じ立場なわけないじゃろう!お主だって、大天使様に敬われておろう?」
ああ、そういえばシルヴィアさんは僕に敬語使っていたな……。
「あれ?でも喋れる聖獣達はあまり僕達聖女に敬語を使わないよね?」
まあ聖獣の中ではティスとヴァイスくらいしか喋れないけど。
「……それは神様からそう命令されているからじゃ。聖女達に寄り添えるように神様が配慮せいと仰ったのじゃ」
「そ、そうだったんだ……」
「あ、あの……私もそんな大層な人間ではないので、敬語は不要です、シュネーヴァイス様……」
完全に怯えきっているセフィーを優しく撫でると、少し落ち着いてくれた。
「むう、構わんが……あまり自分を卑下しすぎるのもやめた方がよいぞ使徒殿」
「どうか、セフィーと呼んでください」
「なら、余のことも敬語は要らぬ。ソラが呼ぶようにヴァイスちゃんで良い」
「いや、ちゃん付けしたことないでしょ。それに、ちゃんって歳では……」
「なにおう!こちとらまだぴちぴちじゃわい!」
ぴちぴちなんて使ってる時点でぴちぴちじゃないんだよ……。
「それで、先程の鳳凰様にしかできないこととは一体……」
「主様は相手の見た技をそのままそっくり返すことができる。セフィー、お主も多少制限はあるが、他人の魔法をコピーして使うことができるはずじゃぞ」




