第197話 憂悶
「どうしてセフィーが……」
「本来ならお伝えすべきではないかもしれませんが、貴女には知る権利があると思いましたから」
「……」
悩みがあったなら相談してくれればよかったのに……。
いや、僕だからできなかったのか……。
わざわざ僕のいる聖徒会への相談でソフィア会長に指定しているということは、そういうことだ。
もっと気軽さや気楽さを普段から装わないと、こういうのは駄目なんだろうな……。
「こういうのはあまりフェアじゃないんですが……」
変に刺激を与えたくはなかった僕は周りに人がいないことを確認してから杖を取り出す。
『――幻影を照らす寡黙なる聖獣よ、今ひと度吾に力を貸し与えたまえ――』
魔法陣を展開し、軽くトントンと二回杖で叩く。
『――顕現せよ、聖獣獏――』
魔法陣から音もなく鼻の長い獏が現れる。
「これが、聖獣様の召喚……初めて見ました」
「てっきりサクラさんで見慣れているものかと……」
サクラさんはプシーを比較的使うと以前聞いたことがある。
確かに召喚している姿をみたことがないけど、聖獣はそれぞれ一匹しかこの世にいない。
それを聞いてから僕がプシーを呼び出すことはあまりしないようにしている。
「最上位魔法は魔力消費が多く、詠唱も必要なので戦闘では使えないと仰っていましたよ」
「ああ、まあ詠唱中は無防備にはなりますからね……。サクラさんも武術やればいいのに……」
「いや、やればでできたら苦労していないと思いますよ……」
聖女なんだからやればできると思うけど……。
「獏、お願い」
『クリアモード』で獏は透明になりつつ、僕に『一体化』をかけてくれる。
「では、行きましょう」
しばらく歩くと、相談室と書かれた場所にセフィーが待っていた。
「セラフィーさん、ですね?」
「は、はい。ソフィア殿下、よろしくお願いします!」
「今の私は会長と呼んでください」
「はい、ソフィア会長」
「良い返事ですね。では、中へどうぞ」
ガラガラと開けたソフィア殿下に、僕は慌てて、静かに先に入る。
少しくらいは打ち合わせしておくんだったよ……。
「どうぞお掛けください」
ソフィア会長がドアを閉めてからソファに座ると、セフィーも向かい側に座る。
僕はセフィーの後ろで立っていることにした。
「さて、ご相談があると投書にありましたが……」
ソフィア会長がそう聞くも、セフィーはそわそわしている。
相手の身分の高さに、緊張しているのだろうか?
「ええと、その前に……。もしかして私の後ろにお義母様がいませんか?」
「「っ!?」」




