第192話 五国
「ごこくかいぎ?」
「ええ。東西南北聖、五大国の王家が聖国に集まり会議を行うのです」
「どんな話をするのですか?」
「年間予算の決定や輸出輸入の取り決め、魔物の被害報告と様々なことを話すのです」
「……それ、私達が出る必要があるんですか?」
国同士のお話しに口を挟めと?
「元々は五国で行うものでしたが、過去の聖女様が関与したいと申されこの形になったそうですよ」
「私はそういう知識が全くないので、見当違いのことを言う可能性がありますけど……」
「別に進んで何かを言う必要はありませんよ。ただ会議を聞いているだけで構いません」
「えっ……?」
「聖女様が聞いている中で勝手なことは言えないでしょう?」
ああ、体のいい抑止力に使われてるだけなのね……。
「参加者はこちらになります」
ルークさんが顔と名前が書かれた紙を挟んだクリップボードを渡してくれた。
「ええと、聖国ハインリヒはハインリヒ王家、西の国セイクラッドからはセイクラッド王家、北の国フィストリアからはフィストリア王家って、エレノアさんも参加なんですね……」
「はい、彼女も王家直系の血が流れていますから」
「あの事件がニュースになったときはびっくりしましたよ。まさか同じ学び舎のエレノア様が王家の方だとは思っていませんでしたから……」
リリエラさんの驚きも僕が通ってきた道だ。
ただ僕の時は知ったタイミングが悪く、驚いているどころではなかったんだけどね……。
「東の国、梛からは樹家……。確か第50代の聖女、樹雫さんの子孫の方々なんでしたっけ?」
「ええ。梛の国では聖女様のお力で和風の要素も多く、数多くの聖女様が隠居の地として選ばれたことから、聖女様の子孫にあたる方々が多く暮らしています」
「中でも篠塚家は一番多く、種族も問わずで篠塚姓の人は多いのですよ」
あのイケメン大好き聖女さんか……。
沢山の子供を産んだって言われているから、そりゃあ増えるよね……。
「南の国、ソレイユからはサン家……。どちらも会ったことはないですね」
「会議の前にいらっしゃいますから、そこで顔合わせがあると思いますよ」
そのまま次のページをめくる。
「ここからは護衛の方々の顔です。王家が集まるので護衛は必須となります。あまりお気になさる必要はございませんが、これらの方々の顔はそれとなく覚えておいていただけますと幸いです」
「……げっ!?」
梛の国の護衛に樹下さんがいた。
まさか、こんなところで見つけるとは……。
「どうかしましたか?」
「いえ、知り合いに似ていた顔でしたが人違いでした」
出来れば会いたくはないんだけどな……。
ぱらぱらとそのまま捲っていくと、今度は見知った顔を見かける。
「えっ……ブルームさんに、涼花さん、それにアレンさんも!?」
「ええ。3親等までの聖女様のご親族は参加することになっています。ただ、意見を言えるのはあくまでも聖女様のみ。ご親族の方々は聖女様がお一人でもご存命の場合は聞くだけで、発言権はございません」
ぺらりと最後の一枚をめくると、知らない女性達が書かれていた。
「ディアナ・ジンデルさんに、サンドラ・ジンデルさん……?ジンデル家って確か……」
「はい。第97代、ジーナ様の奥様と、そのお子様です」




