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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第24章 広宣流布
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第187話 教本

「ちょ、ちょっと!?」


 ミア様が僕を呼び止める。


「どうかしましたか?」

「付いていくとは言ったけど、聖女院に行くなんて聞いてないよ!」

「……ええと、何か問題が?」


「だって今、私服だし……」

「それを言うなら私も私服ですよ。私が浮いてしまいますから、どうか私服で居てくださいませんか?」


 にっこりと微笑むと、顔を反らして赤くする。


「……ごめんなさい。舞い上がって空回りしました……」

「いえ、少し意地悪な言い方をしてすみません……」



  (「シエラちゃんは殿方)  (……シエラちゃんは殿)  (方……」)


 そんな呪文みたいに唱えないでよ……。




「あら、いらっしゃいませシエラ様!お待ちしておりましたよ!!」


 聖女院の端の方にある「編集室」と書かれた部屋に入ると、紫髪のショートヘアの女性が身なりを整えて立っていた。


「エフィーさん、こんにちは」

「座って。あら、その子はお友達ですか?」

「は、はいっ!ミアと申します!あの、も……もしかして……あの有名なエフィー編集長でいらっしゃいますか!?」


 ミア様が僕相手より緊張している……。

 珍しいこともあるもんだ。


「エフィーさん、そんなに有名人なんですか?」

「あらやだ、シエラ様程じゃ……いえ、なんでもないですよ」


 ん?

 なんか様子が……。


「ああ、そういうことですか。ミア様には私のこと知られてしまっているので、大丈夫ですよ」


 僕はそう言って安心させるようにウィッグを外す。


「あら、そうでしたか」

「そ、そうです!シエラちゃんがソラ様なのも、ソラ様が()()むーーー!?」

「ちょっと!?余計なこと言わなくていいですからっ!?」


 ヤバイ単語が聞こえて来たので慌てて口を塞いだ。



  (「それは誰にも言っ)  (ちゃダメです!」)


  (「そ、そうだった…」)


 小声でそう答えるミア様はなぜか顔を真っ赤にしていた。



  (「口を塞がれ)  (ちゃった……」)


 ごにょごにょと何か言っていたが、なんだかよく聞こえなかった。


「ふふ、仲がよろしいのね。それとも、ソラ様は何か弱みでも握られているのですか?」

「いや、そんなわけないですよ……」


 握られているのは事実だけど、内容を言うわけにはいかない。


「ごめんなさい、私一人で勝手に舞い上がってしまって……」

「私のことを編集長と知っているということは、もしかして読者さんかしら?」

「勿論です!聖女専門雑誌『NewSAINT(ニューセイント)』、毎月見ていますから!!お会いできて光栄です!」


 そう、この人こそ、NewSAINTの編集長。

 最初はそんなふざけた名前の雑誌は有志か別の出版社がやっているのだと思っていたのだけれど、弊院だった。


 もともとは民間企業で雑誌が作られていたらしいけど、言っていいことと悪いことの判断が民間だとつきかねるのでこの形に落ち着いたそうだ。


「ミア様は学園の先輩で、広報委員長なんですよ」

「なるほど、通りでソラ様が敬語を使われていると思いました。懐かしいですね、聖女学園の風習……」

「エフィーさんもOBだったんですね」

「もう、随分と昔の話ですよ」

「それで、どうしてソラ様はここに?」


 僕はエフィーさんに目配せをすると、編集室の職員を叫んだ。


「こちらが、例のものです」

「いや、闇取引みたいな言い方しないでくださいよ……」

「『魔術大全』……監修奏天(かなでそら)、編纂エフィー……これって!?」

「以前からお願いしていた、魔術の基礎知識本です」

「基礎知識なんて、そんなご謙遜を。この魔術知識はソラ様のすべての知識が詰まった最高傑作です!この教本で世界が大きく変わるのですよ!」


 教本て……んな大袈裟な。

 謙遜ではなく、本当に大したことは書いていないんだけどな。

 ゲームの知識というかルールや仕様をそのまま箇条書きしたものをエフィーさんに渡して、そのまま本にして貰ったものだ。


 パラパラとめくると、バラバラに書いた内容が章分けされて見事にまとめられており、感心してしまった。


「すごい……!」

「これだけの短時間で、これほどまでに纏められるとは……流石ですね」

「お誉めに預かり光栄です。お約束通り、100冊はソラ様に差し上げます。残りは市場に販売する分と、各学校と孤児院等の育児施設に無料で10冊ずつ配る分ですよね」

「ええ。ありがとうございます」


 これで間違いがなくなっていけばいいな。


「本日の撮影の準備は整っております。庭園へどうぞ」

「撮影?何を撮るの?」

「これから武術の()()を作るんです」

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