第184話 刀術
ミア様の合図とともに生徒が銅鑼を叩くと、「ヴァァァァン」と大きな音を鳴らした。
武術大会と魔術大会で、こうも始め方が違うのは、文化の違いだろうか?
聖国が魔術大国なことはよく挙げられるが、武術は東国・梛の国が有名だ。
この合図も銅鑼も、梛の国の文化に倣って考えられたものだろう。
食と武術の流派に溢れる梛の国には時間さえあれば行ってみたいんだけどな……。
今年行幸で行ったというサクラさんが羨ましい……。
<なお今回は、第100代聖女であらせられます、奏天様にお越しいただいております!ソラ様、よろしくお願いいたします!>
<よろしくお願いします>
<今回は槍と刀ということですが……>
<単純にリーチの長い槍の方が有利ですが、涼花さんはAランク冒険者とお聞きしていますから、分かりませんね>
正直に言うと、この世界でまだ自分以外の刀術士の戦い方を見たことがなかったから、少し興味があった。
だが涼花様は突きをかわすだけ。
なんと言うか、気もそぞろというか集中できていないみたいだけど、何かあったのかな……?
<おおっと!?涼花選手、防戦一方だがどうした!?>
そこでようやく刃を槍と交えた涼花様は、急に動きが軽やかになる。
「くっ!?」
「押して参る」
流石にAランク冒険者なだけあって、明らかにレベルの差がありそうだ。
涼花様が槍を右側に弾くと、そのまま斜めに二連撃を繰り出す。
「くっ!?」
涼花さんが手加減したのか本気だったのかは分からないが、イザベラさんはとっさに後ろに下がって切りつけの衝撃を和らげた。
切りつけられはしたが、ブザーは鳴っていないので致命傷ではなかったようだ。
僕との手合わせでもそうだったけど、イザベラさんは時々相手の攻撃に勘のいい動きをする。
<ソラ様、今の涼花選手の技はいかがでしょう?>
<すみません、ええと?>
<あ、ああ……失礼しました!アレン様と違ってあまり驚かれないので、見たことがあるのかと思いまして……>
ああ、そうか刀術に詳しくない人は「型」技のことは分からないよね……。
何のために呼ばれたと思ってるんだ僕は。
僕が仕事を放棄したら意味ないだろうに……。
<ええと……今のは刀術六の型、氷雨ですね。雹が降るかのように素早い二連撃をする技です>
<<えっ?>>
思わずハモった男女の声にビックリする。
代表してアレンさんが僕に聞いてきた。
<ソラ様、刀術には型があるのですか?>
えっ……。
まさか、そこからなの?
武術は、魔術以上に発展が遅れているようだった。




