第177話 約束
魔術大会はシエラが一位、エルーちゃんが二位、三位はソフィア会長に落ち着いた。
講師をした生徒がこぞっていい成績を修めたのは喜ばしかったけど、トップ3に関しては加護持ち高レベル集団なので、流石に大人げなさすぎた。
加護とかは大会があることを事前知っていたのなら、自重していたんだけどな……。
「前回よりも順位は下がりましたけれど、リベンジは果たせましたし、シエラさんとも戦えましたし、最後の大会としては満足です」
「それは何よりです」
「もうっ、優勝された人が何も嬉しそうにしていないのですから……。今年の一位なんですよ?」
「私はズルしているようなものですから……」
「ミアさんも言っていましたけど、流石は『我等が謙遜』ですね。エルーシアさんはこんなに嬉しそうにしているというのに……」
エルーちゃんを見ると、ほっこりした顔をしていて、思わず僕もほっこりしてしまう。
「二人してほっこりして……。仲が良いことですね」
「すみません、つい……」
「ごめんなさい……。でも聖獣の加護は威力2倍ですから。ズルをしているという自覚は持っておいた方がいいと思いますよ。手加減を忘れると大変なことになりますから」
「そうですね……。私も加護がなければマヤさんには勝てなかったかもしれませんし……」
三人で話しながら歩くが、僕はそこから別れる。
「では私はこれで……」
「いってらっしゃいませ」
「あら?聖徒会室にはいらっしゃらないのですか?」
「学園長のところに行ってきます。時間があれば聖徒会にも行くつもりです」
「ふふ、優勝者は人気者ですね」
「違いますよ。約束があったでしょう?」
「ああ、そういえばそうでしたね……」
ただ、これは学園長室に来る表向きの口実だ。
二人と別れて学園長室へ。
「失礼します」
「いらっしゃいましたね。さて、約束の件ですが……」
「魔法理論に関しては私が書いたメモ書きから聖女院の方に編纂して貰った参考書を各学校に無料で配るので、それを各学校で落とし込んでください。戦闘実技に関してもそれを見ればやることが決まると思います」
「い、いつの間に……」
熱を出したのはそのせいといっても過言ではない。
「それより、大事な話があります」
「……やはりソラ様の目は誤魔化せませんか……」
「学園長っ!まさか……」
「私がそんな何の利益もないことをするわけがありません。私が気付いたのは、ソラ様のご指導された一般生徒と、ミカエラ先生の指導した生徒の実力がほぼ互角だったことです」
「えっ、それだけの理由で気付いたのですか……?」
「ソラ様が回り道なんてするはずありませんもの」
「…………」
それはもはや盲信ではないだろうか……?
「原因と犯人の特定は?」
「いえ、まだ。ですからまずは当事者に確認を取るつもりでした」
「なら、手間が省けましたね」
「まさか、目星がついているのですか?」
「意図までは分かりませんが、恐らく当事者で合っています」




