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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第22章 鶏鳴狗盗
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第173話 憂慮

「武器による不正……?」

「それは確かなの?」


 かえって皆を不安にさせてしまったかもしれないが、事前に伝えておかないともっと大変なことになる。


「少なくとも私達二人はやられました。私の場合は『木の杖』に似た色をしている『精霊樹の杖』を使われました。魔力消費が2倍になる代わりに、魔法の威力が1.5倍になる武器です」

「見ただけで、武器の性能まで分かるのですか?」

「ええ。杖の木の木目が巻き貝のような螺旋紋様をしていたので、恐らくそうです」

「博識も、ここまで来れば生き字引ね……」


 エルーちゃんとリリエラさんが得意そうにしているのは何でだろうか……?


「ですから、相手の威力はいつもより高い可能性があります」

「そこまでして勝ちたいだなんて……」

「いや、使った本人はそのことを事前に聞かされていなかったんです」

「……わざわざ不正をさせたの?何のために?」

「犯人がわからない以上、それもまだ分かりません……」

「シエラとエルーシアだけ目の敵にされていることはないかしら?何か心当たりは?」

「……むしろ心当たりしかないですね。私はどこに行っても嫌われやすい質なので……」

「シエラ様……」


 リリエラさんが僕の手をとる。


「こんなに強く優しくて可愛らしいのだから、皆羨ましいだけよ。気にしないのよ……」


 可愛い人に可愛いって言われるのはなんか納得できないんだよな……。




「それが本当なのだとしたら、随分とくだらないわね」

「はい」


 マヤ様の言うとおり。

 この行為は大会の本質を見失っている。

 誰の仕業かはまだわからないけど、不正をされている本人にも知らせていないなんて、質が悪すぎる。

 絶対に許せない……。


「シエラ様、お顔が少し怖くなられていますよ」


 エルーちゃんが諭してくれた。


「ごめんなさい、少し感情的になっていました」


 不安になる皆。

 そこにリリエラさんが発言する。


「シエラさん、敢えて言いますが今の我々は誰も信用できない状態です。私はシエラさんを信用していますが、仮にシエラさんが犯人で私達を騙していたのだとしても、現状我々にはそれを知る術がないですから」


 リリエラさんは、そう言ってくれた。


「そうですね。ですから、判断は各自でしてもらって構いません。ですが知らないと皆さんが用意してきたパフォーマンスができない可能性がありましたから。今からどうするか作戦をたてておいてください」

「だけど怖いわ……。威力が1.5倍になるなんて……」

「そんな相手に私達が敵うわけ……」

「ああ、それは心配ないと思いますよ」

「えっ……?」


「もとの練度とレベルが低いので、1.5倍しても大した火力にならないんですよ……。皆さんが受けてきたソフィア会長の魔法に比べたら雀の涙みたいなものです」

「そうなんですか?」


 僕が本気で2日育てたソフィア会長だからね……。


「だから、皆さんの障壁で防げるレベルですよ。リフレクトバリアすら必要ないです」


 障壁もリフレクトバリアも練度を上げてきたのだから、皆どんどん固くなっていっている。


「なぁんだ、てっきり会長レベルの人達を相手にしなきゃいけないのかと思った……。心配して損した……」

「そうよね、普通はあんな魔法を連発できる方がおかしいのよ……」

「…………」


 ソフィア会長が苦虫を噛み潰したような表情をするのを見て、僕とエルーちゃんはにっこりと笑みを浮かべた。


「な、なんですか?二人して……」

「「ようこそ、こちら側へ」」


 その後、ソフィア会長は暫く黙ったままだった。

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