第17話 生誕
目が醒めると、知らな……いや、普通に知っている天井だった。
どうやら聖女院の僕の部屋までサクラさんが運んでくれたみたいだ。
「ソラ様!」
僕が起きたことに気が付いたエルーちゃんは、がばっと抱きついてきた。
えっ……何!?
「ぐすっ……戦闘実技の試験が終わってから、校庭に戻るとサクラ様が学園長とソラ様を抱えていらっしゃって……。 そのまま寝かせたのですが、1日経ってもソラ様が目を覚まさなくて……。 ぐすっ……私、このままソラ様の目が覚まされないかもと思って……うわぁあぁぁん!」
大粒の涙をぽろぽろと流していた。
そっか、丸1日寝ていたんだ……。
ただ魔力切れでぶっ倒れていただけだけど、昔と違って今は少しでも心配してくれる人がいる。
それを忘れてしまい、サクラさんに子供じみた報復をしてしまった。
「心配かけちゃって、ごめんね。 今度からは、その……気を付けるから」
頭を撫でると、泣き腫らした顔を恥ずかしそうにしながら上目遣いでこちらを向いてくれる。
「約束……ですよ?」
僕たちは指切りで約束をした。
◆◆◆◆◆
「私、戦闘実技でAランク冒険者のマーリアさんと模擬戦を行ったのですが、勝ったんです。 これもソラ様のお陰です。ありがとうございます!」
「じゃあ戦闘実技は満点取れたんだね。 おめでとう」
「ありがとうございますっ! ソラ様も勝たれたのですよね?学園長に勝たれるなんて、凄すぎます」
「いや、僕の場合はその……」
あれは勝ったと言えるのかな……?
「あ、あれ?」
口調に違和感を感じて服装を見ると、パジャマ姿になっていることに気付いた。
というか"私"ではなく、"僕"の方に違和感を感じている時点で末期では……?
「どうかしましたか?」
「アノ、ツカヌコトヲオウカガイシマスガ……」
僕はカタコトで、聞きたくはないが聞かなければならないあることについて確認を試みた。
「もしかしてエルーちゃん、着替えさせてくれた……?」
「あっ……」
何が聞きたいのか分かってしまったようで、顔を真っ赤にした。
そしてその反応と無言ということはつまり……。
「わわわわ私はっ! ソラ様のお世話をする専属メイドですから! そ、それに他の方に……その……男性と伝えるわけにもいきませんし……!」
「いや、そこはルークさんに任せればよかったんじゃ……」
「あっ……」
更に真っ赤になってしまった。
エルーちゃんに限ってそんなことはないだろうけど、『実は見たかったからわざと……』とかではないだろう。
……ないよね?
◆◆◆◆◆
食堂に昼頃になってお腹も空いたので、着替えて食堂へ向かった。
「今日はやけに静かね。 何かあるの?」
廊下を歩いていても誰も通らないなんて珍しい。
「ふふふ、今日は特別な日ですっ!」
エルーちゃんも勿体をつけてそう言うが、詳細は教えてくれなかった。
なんだろう、大安とか?
そんな疑問も、食堂の扉を開けるまでのことだった。
「ソラ様、お誕生日おめでとうございます」
「おめでとうございます」
執事さんに続くようにメイドさん達が祝福の言葉を述べる。
豪華な食事にウェディングケーキかと思うような大きなケーキまである。
「おめでとうございます、ソラ様」
「おめでとう、ソラちゃん!」
ルークさんやサクラさんまでお祝いしてくれる。
そっか、今日は3月20日。僕の誕生日だった。
そういえば誕生日ってお祝いの行事だっけ。
最後に入室したエルーちゃんが前にきて振り向く。
「いつもありがとうございます、ソラ様! お誕生日おめでとうございます!」
僕は他人事のようにその光景を眺めると、途端に目の前がぼやけた。
「ぅ……ふぇ……」
こんなに暖かい誕生日は初めてだった。




