閑話46 名付け
【柚季桜視点】
「サクラ!今日は私も色々と考えてきたんだ」
最近はこうしてアレンがやってくると、私達の子の名前をメイドのカーラと三人で考える。
カーラは普段アレンを毛嫌いしているけど、私の子のことになると一時休戦になるのだから、この子は将来有望だ。
いけない。
すぐ親バカになってしまうのも困ったものね。
仲良くなれるといいのだけれど。
「ふふ、二人にはこの子の特別なことを教えてあげるわ」
「特別なこと、ですか?」
「他の人たちには絶対に内緒よ?まだソラちゃんとエリス、それからシルヴィしか知らないんだから」
「なんだい?勿体ぶって……」
「この子はね、聖女になることが決まっているの」
「えっ……」
「この世界で初めて、聖女から聖女が産まれるのよ」
「聖女様から聖女様は産まれるはずがなかったのでは……?」
私はマコトちゃんのお話をすることにした。
「……魂だけの転移……」
「そんなわけで、彼女……霞真ちゃんを私達で転生させることにしたの」
「そんなことになっていたなんて……」
「本当はアレンには事前に伝えておきたかったんだけど、器のない魂はどんどん傷ついてしまい、しまいには記憶がなくなってしまうから、急ぐ必要があってね……」
「構わないさ。サクラの幸せが、私の幸せなのだから」
「アレンならそう言ってくれると思ったわ……」
「いちゃつくのなら、私のいないところでやってください」
「「……」」
釘を打たれてしまった。
「マコト様……聖女様はどんな方なのですか?」
「無口だけど、いい子だって言っていたわ。エリス談だから、信用できるかは五分五分だけどね」
「サクラの中のエリス様、大分信頼度が低くないか……?」
ソラちゃんの一件でエリスの信用がどん底に落ちたからね。
堕女神と言っても過言ではないと思うわ。
「では、お子様のお名前はマコト様になるのでしょうか……?」
「彼女は『新しい両親のネーミングセンスに任せる』って言っていたそうよ」
「それは、身が引き締まる想いだね」
また三人でじっくりと考える。
「そうだ、マオっていうのはどうかな?」
「マオ?」
「ああ。せっかく前世の真って素敵な名前があるのだから、それを使ってあげたいだろう?真実の真に桜と書いて、真桜っていうのはどうかなって」
「……」
「アレン様にしては、珍しくまともですね……」
「私もサクラの世界の名付けについて、聖女記から色々と調べて勉強したからね。それに、実はこの間ブルームさんにも涼花ちゃんの名付け方について訊ねてみたんだ」
「ブルームさんに……」
私の知らないところでそんなことをしていたなんて……。
「葵様もブルームさんもお互いに花に関係がある名前だから、涼花ちゃんには『花』という漢字を付けようって決まったんだそうだ。私も親の名前から付けるのもいいと思ってね」
真桜。
いい名じゃない。
「決めたわ。この子は真桜にする」
「素晴らしい名前です。真桜様、待ち遠しいですわ……!」
私達がいえた立場じゃないけれど、カーラは真桜のことを溺愛しそうね。
大変なことがあった子だけれど、早く笑顔にさせてあげたいわ。




