閑話43 お節介
【マヤ・エドウィン視点】
夏のある日のこと。
最近はよく実家から毎度のように仕送りが届いてくる。
フィストリアのエドウィン侯爵家はお節介者の集まりだ。
お父様は生まれた私が水魔法の使い手だと知ると、「浮島の王城へ渡るのに氷は必要不可欠だから、食いっぱぐれることはなくて安心だな」ととても前向きな回答をくれたし、幼い頃に感情をあまり表に出せなくて悩んでいると、お母様が「クールで格好良い女を目指せばいいじゃない」と言ってくれた。
何事も消極的な私だが、それを補うように周りの人が褒めてくれる。
学園の皆もそうだ。
流石に涼花には敵わないけれど、次席として毎回成績が良いと先生もクラスメイトも褒めてくれた。
そして、去年の魔術大会では決勝でソフィア王女を倒して優勝した。
昨年の武術大会も涼花が優勝しているから、昨年は1-Sが一番強いクラスだった。
だが、優勝はいいことばかりではない。
優勝すると色々な団体や貴族から縁談やスカウトの話がやって来る。
涼花は序列が高すぎるため暗黙の了解で誰も縁談を切り出さないそうだが、私の場合は自分より上の公爵家や王家からの縁談話がどんどんやって来るようになった。
私はそれが一年たって大分煩わしく感じてきていた。
しかしこの件について両親は「やりたいことをやりなさい」と言うだけで、いつものように模範解答をくれなかった。
私は今まで周りの人に道を作ってもらって、私はその道を歩くだけだった。
それが私自身楽だったし、周りも褒めてくれるのでそうしていただけだった。
けれど、そこで突然「自分の好きにしなさい」と繋いだ手を離されても困る。
今まで頼りきりだった私がすぐに自分でやりたいことなんて見つかるはずがない。
「お節介をしたのなら、最後までお節介でいてくれれば良いのに……」
ふとそう独り言を口にすると、仕送りの箱からボスッと音が聞こえた。
箱の隣から黒い影が姿を現す。
「ミーちゃん、久しぶりね」
ここのところ見ていなかったけど、たまにふらっと現れては私に癒しを与えてくれていた。
猫は気楽で羨ましい。
私も猫になったのなら、身を固めずに気儘に毎日を過ごすのに……。
ミーちゃんを撫でているとやがて気が散ったのか去っていく。
その後日課の魔法訓練をしたとき、事件は起こった。
「っ!?」
魔法が、使えない……?




