第158話 猜疑
「きゃあっ!?」
「次!」
ソフィア会長は5人ずつ並ばせて煉獄炎を放ち、障壁をことごとく割っていく。
普段あまり障壁が壊されることを体験することがないらしいので、障壁ではどうにもならない攻撃があることをこれを機に覚えていってほしい。
リフレクトバリアの段階に進んだ人は、リフレクトバリア同士で弾き返しあいをして弾くタイミングと二倍返しするタイミングを知る訓練をする。
その間に一人ずつ得意な魔法を確認していき、まずはひたすらその魔法の練度を上げる訓練をしてもらう。
「こんなので本当に強くなるのかしら……?」
「無駄口を叩いている暇があったら、一回でも多く詠唱してください。成長しているかどうかは数日やってみれば分かることですから。それよりももし成長していた場合、その一回の詠唱が足りなくて相手に負けることになるかもしれませんよ」
僕がそう言うと、そそくさと訓練を再開する。
「今日はこれで終わりです。アピール重視の方でどうアピールするか決まっていない人は考えてきてくださいね」
時間も時間になり解散をすると、奥の方からアレンさんがやって来る。
「私はアレン……様とお話をしてくるから、エルーちゃんは先に寮に戻っていてもらえる?」
「かしこまりました」
アレンさんと聖女院に向かって歩きながら、話をする。
「武術の方はどうですか?」
「面白い子達が多いですね。将来有望だと思いますよ」
練習については以前僕が親衛隊の人達に教えた練度上げだ。
武器固有の技にも、練度がある。
魔法と違ってそこに変な知恵は介入せず、共通して「普通は練習しないとうまくならない」という感覚を持っている分、説明は不要だと言ってもいいくらいだ。
練度の説明をしたときに、魔法使いよりも受け入れやすいのは少し羨ましい。
……まあ実力が知られていて有名なアレンさんが言うからみんな言うことを素直に聞くというのもあると思うけどね。
アレンさん、ほんとにモテるからなぁ……。
「どうかしましたか?」
「いえ……。私ももう少し筋肉とか付けたら、初対面で女の子に間違われることもなかったのかなって思っただけです」
「シエラさんがムキムキになったら哀しむ人があとをたたないでしょうね……」
どうしてよ……。
アレンさんの用事というのは、教え方の相談だった。
実は生徒に教えるのは初めてらしく、以前僕が教えたやり方で良いのかという質問だった。
その日は軽く相談に乗って帰ってもらった。
翌日、昨日見れなかった人達の話を聞いていく。
「次は……マヤ様、こちらへどうぞ」
僕がマヤ様を呼ぶと、すたすたと歩いてくる。
「まずは……」
「私にはいいわ」
「えっ……」
被せるように遮られると、意外な答えが帰ってきた。
「私、出場を辞退するつもりだから」




