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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第20章 夜郎自大
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第157話 練度

 皆さんが普段見ているディバインレーザーとは違うということを見てもらうところまでは作戦通りだったのだけれど、そこから先は予想外の展開になった。


 ミカエラ先生に勝ったはいいものの、あまりにもディバインレーザーが太すぎたせいで、「不正をしたのでは」と疑われてしまい、結局生徒は半分ずつくらいに分かれてしまった。


 まあでも結果としては半数近く増えてくれたし、マヤ様もこちらに来てくれた。


「マヤ様、私を選んでくださって、ありがとうございます」

「別に、私は最初から勝った方に付くようにすると決めていただけよ。どうせ講師なんてどちらを選んだって変わらないのだから……」


 半ば諦めたような台詞だが、僕は少し嬉しかった。


「そこに気付けているなら、十分だと思います」

「……私は今あなたを(けな)したつもりなのだけれど」

「私なんていくらでも貶していただいて構いません。そもそも皆さんに教えられるような大層な人間ではないのですから」

「……そこまでは言っていないわ」


 選んでくれたのだから、ここから先は僕次第だ。


「それでシエラ先生、練習メニューはどうするのですか?」

「先生はやめてくださいよ、ソフィア会長……。練習メニューは二手に分かれます。まずは防御魔法の強化からですかね。ソフィア会長、あなたが一番得意な上級範囲魔法はありますか?」

「それなら、先程ミカエラ先生が放った煉獄炎(インフェルノ)ですね」

「なるほど……。まずは障壁のハニカム化からいきましょう。ソフィア会長は煉獄炎(インフェルノ)を弱めに打ち続けてください。一度エルーちゃんの障壁でギリギリ防げるくらいの火力を探して、まずは皆さん障壁のハニカム化でそれを防げるようにまでなってください。それが終わったら、リフレクトバリアを練習してもらいます。障壁のやり方はソフィア会長もご存知でしょうから、詰まるようでしたら教えてあげてください」


 僕はアイテム袋から取り出したように見せつつ、アイテムボックスからいつものように『漆黒のワンド』と『精霊のネックレス』を取り出す。


「……防御面の強化だけなのですか?」

「攻撃面は私とエルーちゃんで強化していきますから、防御面はお任せします。煉獄炎(インフェルノ)を打ち続けることはソフィア会長ご自身の強化にもなりますから、効率よく回して一回でも多く出せるようにしてくださいね」

「分かりました」


 ソフィア会長にはエルーちゃんに数回煉獄炎(インフェルノ)を放って、火力調節をしてもらう。


「攻撃面の強化は私とエルーちゃんがそれぞれ一人ずつ呼んでいきます。呼ばれたら来てください。同じクラスのリリエラさんは既に防御面はある程度できていると思いますから、まずはリリエラさんから説明します。エルーちゃんにも説明が必要だと思うのでまずは二人とも端に来てください」


 ソフィア王女に場を任せて、三人は端っこに移動する。


「早速ですがリリエラさんはまずこの魔術大会、メインとなる目標はスポンサーにアピールしたいことと勝ち残ること、どちらに重きを置いていますか?」

「……ええと、どちらも……でしょうか。もし聖女院に就職できなかった時にご縁は多くあった方がいいと思いますし、スポンサーとして皆様を楽しませたいという願望もあります。ですがどちらかといえば私は侯爵家で将来がある程度決まっておりますので、勝ち残ってシエラさんと戦いたいという希望の方が強いと思います」

「なるほど」

「……どうしてそんな質問を?」


 エルーちゃんが純粋な疑問を述べる。


「スポンサーにアピールしたいのならば、自己強化はほどほどにしてどう魅せるかを考えて出力する期間が必要です。勝ち負けよりも一試合の中で自分の強みをいかにアピールできるかの方が大事になりますから」

「確かに三年連続で選ばれるとは限らないですから、一回の機会は大事ですよね。もし勝ち残ったとしても、見に来た人に印象に残らなければ参加した意味が薄れてしまいますし……」

「確かに……」


「今回は単純に勝ち残りたいとのことですが、アピール重視の場合でも途中までの行程は『魔法の練度を上げる』ことです」

「シエラ先生、()()とは何でしょうか?」


 リリエラさんまで先生なんて言わないでよ……。


「ああ、ごめんなさい。これは私が勝手にそう呼んでいるだけです。お二人は同じ魔法なのに人によって威力や大きさ、発動速度が違ったりすることはご存知でしょうか?」

「それはもちろん。初めからその魔法の威力が高かったりするのは才能だと言われています」


 才能……。

 まあある意味正しいと言えば正しいけど、その認識は間違っているような気がする。


「ですが、後天的に才能が開花することもあるとされています」

「……ごめんなさい。私は世間に疎いので確認なのですが、一般的に、後天的に才能が開花するための方法はなんだとされていますか?」

「正しい方法は未だ見つかってはおりませんが、まれに級位が上である魔法を使えるようになったタイミングで、級位の低い魔法の威力が上がることがあると言われています」


 要するに、上級魔法を使えるようになったときに、中級魔法の威力が上がると言われているらしい。


「……驚きました。まるでなっていませんね……。そもそも魔法の威力を上げるにはその魔法を使い込む必要があります。他の魔法に目移りしていては上達が遅くなるだけなんですよ」

「そ、そうだったのですか……」


 上級魔法を早く習得するには三通りある。

 同じ属性の中級魔法を一定数使えるようになるか、レベルを上げるか、一つの中級魔法の練度を50以上にするかだ。

 上級魔法を習得した時に中級魔法の威力が上がったというのは、正確には中級魔法の練度が50に到達して習得した人だったということだ。

 練度が上がっているのだから、威力や発動速度が上がっているのは当然だ。


 レベルを上げるのは学園の方針では無理だし、練度はステータスに書かれない暗黙のステータスなので知られていなかったようだ。

 となると必然的に中級魔法をなるだけ覚えようとする方針になったのかな……。

 でもただ覚えただけの魔法ほど価値の薄いものはない。


「もしかしてシエラ先生は、その才能の開花方法がお分かりなのでしょうか?」


 エルーちゃんまで先生呼びをはじめてしまった……。

 伊達メガネでも付けた方がいいのかな……?


「はい。皆さんが『魔法の才能』と呼ぶものを私は『魔法の練度』と呼んでいますが、それには理由があります。確かに初期の練度は人によって個人差が分かれますが、聖女様のように加護をいただいている方々でない限りは最終的に伸ばすとその練度は変わらなくなります」

「「!?」」


 ゲームでは相手へ与えるダメージ量が見えていた。

 長いことやっていると、明らかにレベルもステータスも上がっていないのに威力が上がるタイミングが分かるんだよね……。

 最初は10回、次は20回と増えて行き……練度99から練度100の時は1000回も発動しないといけなくて大変だったなぁ……。


「私はディバインレーザーをおよそ5万回発動してディバインレーザーの練度を100にしました。魔法の練度は、努力次第で誰でも追い付けるのです」

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