閑話4 腕試し
【エルーシア視点】
ソラ様に送り出されて体育館に入ると、獣人の先生がいらっしゃいました。
「アタシはAランク冒険者のマーリアだ。 ここ聖女学園で臨時講師をやっている」
Aランクというと、Sに次いで高いランクです。
そんな方が先生とは……。
やはり、聖女学園は生徒だけでなく、先生もすごい方々なのですね。
同時に試験を終えた方々が残念そうにされている理由も分かった気がします。
流石に相手が悪すぎます……!
で、ですが、私は模擬戦とはいえサクラ様に勝たれたあの大聖女ソラ様に師事したのです。
そのご尊顔に泥を塗るわけにはまいりません!
「受験番号1334番、エルーシアです。 よろしくお願いします!」
「メイドちゃんか……。 戦闘面はあんまり期待できそうにないかね……」
呆れられてしまいました。
ですが、何と言われようと私は教わったことをやりきるだけです。
私はソラ様からいただいた2本の杖と、ネックレスを装備して構えます。
「おっ? 面白そうなスタイルじゃないか! 先手は譲ってあげる。 いつでもかかってきな!」
私はアイスニードルで両挟み撃ちにすると、マーリア先生は前に出てきます。
そこをアイススピアで攻撃すると、ナイフで弾いてそのまま突っ込んできます。
「ほっ!」
ガキン!と障壁とナイフの弾かれる音がしました。
「かっっっったっ! なんだこの障壁!」
弾けました!
でも相手はAランク冒険者です。油断はできません。
私がウォーターショットで牽制していると、ふともものホルスターからもう一つナイフを取り出して右、左、蹴りと攻撃してきました。
この速度ならソラ様と練習しました。片手で障壁を張ることで片手が空きますね!
そのまま左で障壁を張りつつ、貯めた魔力で周りの地面に水の沼を作る中級魔法のウォーターポンドで沈めます。
「うおぉっ!?」
片足が半分くらい浸かったところで、ぴょんと跳び跳ねて抜けられてしまいました。
「あ、危ない危ない。 ビビったよ、アンタ強いな!」
まだ苦手意識が抜けない私ですが、少しは評価してくださるそうです。
ですが、これで仕込みは整いました。
あとは私はソラ様にいただいた作戦通りにやるだけです。
私はアイスニードルで斜め上から左右を攻撃すると、両手のナイフで弾き返す。
視線は上に向けたので、下はがら空きのはず。
「!?」
これでマーリア先生の片足の足元は地面と繋がれた氷で固定されました。
「しまった……!? さっきの水か!」
そうです。
先程ぬかるんだときに浸かった水を氷に変えて身動きを取れなくします。
「はあっっ!」
中級魔法のアイスレインで氷槍の雨を降らせます。
これで一撃は入ったと思います。
しかし、ソラ様はこんな状況から抜け出せました。
まだ油断してはいけません。
次なる手を――
「だああぁ参った参った!!」
「……へっ?」
「アタシの敗けだよ」
ギリギリで反らせたアイスレインを見て「うひぃ」と声を上げるマーリア先生。
私……勝ったんですか!?
「アンタ、冒険者になってみる気はないかい?」
「冒険者……ですか?」
「そ。 アンタなら、Sランクも夢じゃない」
そ、そんなに……。
ですが、これはソラ様に教わったことをやっていただけです。
きっとソラ様に師事すれば、みんな冒険者になれてしまうのでしょう。
「い、いえ! 私にはお仕えしたい主さまがおりますので」
そんなソラ様をお世話する今のお仕事はやめたくないです。
「そっか、残念。 ともかくおめでとう。 アンタの実力は、アタシが保証するよ!」
かくも私は最も苦手な戦闘実技で100点を取ったのでした。




