第156話 全力
壇上に上がるミカエラ先生は僕に対して明らかな敵対意識を向けていた。
「私も学園長の決定には納得いっていなかったんだ。本当に学園長に勝ったかも分からないしな……。ここで私が勝った場合は、貴様には降りてもらう」
「丁度いいですね。私も生徒ながら皆さんにお教えするなんて立場も弁えないこと、学園長から強制されなければやりたくもなかったのですから……」
「ちょっと、シエラさん!?」
少し怒る学園長。
「ふふ、冗談です」
いつも都合よく僕を使っているお返しくらいはしてもバチは当たらないだろう。
「いえ、せっかくなら冗談ではなくしてしまいましょう。ミカエラ先生、今私は『受講料』という名の首輪で繋がれて学園長に操られているだけのただの一般生徒です……」
「生意気な……」
ちらりと見ると、「一銭も受け取らないと言ったくせに……」とでも目が語っていたけど、そんなことを口にだしてしまえば、逆に一銭も払っていないという信用問題になってしまうため学園長は閉口していた。
「私は全力でいきますので、力ずくで止めてくださいね」
「……お互いに杖を」
ミカエラ先生は構えるが、僕は棒立ちだ。
「貴様……舐めているのか?」
「始め!」
学園長の合図と共にミカエラ先生は上級魔法「煉獄炎」を唱える。
正直体力のせいで直撃してもブザーは鳴らないんだけど、全力でいくと言ったからには手は抜けない。
範囲魔法でもリフレクトバリアは効く。
ただしタイミングは非常にシビアだ。
ただ朱雀の煉獄炎を何百と受けてきた身としては、この程度の火力では物足りない。
バシンと一部を弾けば、全ての炎がミカエラ先生に向かう。
範囲攻撃魔法の弱点はもしそれがはね返されたとき、一点集中して自分に降りかかってくることだ。
「くっ!私がその手にやられるとでも思ったのか?煉獄炎!」
ぶつかった煉獄炎同士、シュウウ……と音を立てて書き消されていく。
倍返ししたものがミカエラ先生の放った煉獄炎で相殺されたということは、初擊は手を抜いたのだろうか?
それとも、魔力温存のためだろうか?
どちらにせよ、相殺に1手を費やしてしまった時点でもうおしまいだ。
「ディバインレーザー」
今までは割と練度の加減をしていたが、殺生の心配がないここでなら最大練度で大丈夫だろう。
久しぶりに全力で放つディバインレーザーは、相変わらず極太すぎて思わず苦笑いしてしまう程だ。
でもこれはただの試合ではなく、生徒にアピールするための試合。
だから敢えてこの普通とは違う極太ディバインレーザーを生徒の皆さんに見せる必要があった。
直径約10メートル、元の世界の大きなトンネルくらいはある発生の早い光の光線は、ミカエラさんもろとも吹き飛ばす。
壁もダメージを受けないためそのままぶつかって倒れ、ビーッとブザーが鳴る。
「くっ……」
……とはいえ流石にちょっとやりすぎたかも……。




