第154話 方法
学園長の話を聞いて、聖徒会室に戻る道中。
「まさか武術大会の講師まで勧められるとは思いませんでしたよ……」
「当たり前です。あの『剣聖』アレン様を倒したのですから、正当な評価です」
勿論リスクの方が高いので断ったけどね。
「それで、具体的にどうなさるおつもりですか?」
歩きながらこちらを向いて少しかがむソフィア会長。
「ソフィア会長、口調口調」
「あっ……ごめんなさい。つい敬愛の念が……」
口に手を当てる会長。
「ついじゃないですよ……。気を付けてくださいよ?」
回りに誰もいなかったけど、どこで誰が聞いているかも分からないんだから……。
この間だってミア様に聞かれてしまったし……。
「それにしてもシエラさんがあんなに怒るなんて、珍しいですね」
「いや、怒っていたわけではないですよ」
「そうなんですか?でも、納得はしていないようでしたけれど……」
「まあ納得はしていないですね。時間の無駄……とまではいかないですが、あれなら理解している人なら自主練をした方が幾分かマシとは思います」
「そんなにですか……。2年間やってきた身としては衝撃的なのですが……」
どうやら会長は一年生の頃から代表に選ばれるほどの実力だったみたいだ。
「まあ今回はあの訓練方法が使えないのが非常に残念ですけれど……」
「覚悟のない生徒にアレは、流石に学園を辞めかねませんよ……」
あれが最短で伸びる方法なのに……。
そもそも迷宮は聖女の許可があるか、高ランク冒険者じゃないと入ることもできないらしい。
更にいうなら、魔物と戦うのもダメときた。
「魔物と戦わずして強くなるのでは、いずれ皆……限界を迎えます」
まあ、「普通は限界を迎えるまで育成することなんてないです」と言われてしまえばそれまでなんだけど……。
「もしかして、それを新しい『教え方』にするつもりですか?」
「いずれはそうしていきたいとも考えましたが、こればかりは命が絡むので強制はできません……。でも別に魔物と戦わずして能力を伸ばす方法がないとは言っていませんよ」
「でしたら、何に納得されていなかったのですか?」
「今回私が納得していないのは、その効率があまりにも悪すぎるからです」
いや、むしろそれを妨げていると言ってもいい。
「まあ決めるのはスカウトする側のことなので、実際にやってみないとこればかりは……」
会長は僕の前を歩き振り返る。
「ふふ、何をされるか楽しみですね。応援していますから、頑張ってください」
その言葉に、僕は立ち止まる。
「何言ってるんですか?会長もやるんですよ?」
「え……?」
「二人の協力者はエルーちゃんと、ソフィア会長、貴女なんですから」




