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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第20章 夜郎自大
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第153話 条件

「講師……?」

「はい。私がやるよりはシエラさんの方が生徒達も有意義になると思いますから」

「……生徒が講師をやるなんて前代未聞すぎませんか?」

「過去に優れたSランク冒険者が学園に入ったときには、そういうことがありましたよ」


 うーん、それならいい……のか……?


「もちろんきちんとした講師として雇うので、お給料……もといお布施をさせていただきますよ」


 何もかもやって貰っている身としていえた身分ではないんだけど、正直お金には困ってないんだよな……。


 フィストリアから大量にお布施されてしまったし……。

 捕虜を匿ったときに、聖女院のみんなが食料や衣服、お風呂などの提供を手伝ってくれたようなので、その功績としてみんなに分配が多くなるようにはできたんだけど、それでも多すぎた。


「それに、私は一年生です。生意気な年下には教わりたくないと思う人も多いのでは?」


 貴族が多いこの学園ではプライドの高い人が多いだろう。

 そんな中で僕が講師なんてやれば、非難の嵐だろうことくらい目に見える。


「それは向上心のない者がやることです。私はシエラさんになら教わりたいと思いますよ」

「それは正体を知っているからでしょう?」

「そういうことではありません。年下だ平民だと言っているうちは向上心がないということです。たとえ年下であろうとどんな身分であろうと、もっと貪欲に求めなければ変われないのだと思いました」

「ソフィア会長……」


 ソフィア王女、なんか魔王が去ってから変わった気がする。


「でも、こういうのは本人のモチベーションなんですから。私は教わる気がない人に教えることなんてできません。ですから、そういう人には他の講師を付けてください。生徒の皆さんには選択肢を用意してほしいのです」


 学園長は少し考える素振りをしたあと、こちらを見つめた。


「……まあ、そのくらいでしたら。本来なら全員ソラ様の講義を受講していただきたかったのですが」

「学園長は私で楽をしようとしがちですから。そうはさせませんよ……」


 振り回されるこっちの身にもなってほしい。


「……入試の件で随分と信用が落ちたみたいですね」


 いや、日頃の積み重ねだよ……。


「ですが、もっと強くなることができる手段があるのに、それをさせないのは私の主義に反しますから。生徒には普通で満足して貰っては困るのです。今後魔王が復活したときに、聖女様ばかりに負担がかかるようなことにはしないために……」

「サクラ様は『ソラちゃんがあと数秒遅く来ていれば私は死んでいた』とお言葉をのべておられました。ソラ様、聖国の民はサクラ様の件で負った心の傷から立ち直れない者も多くいます。確かに学園長はソラ様には信用がない行動が目立つかもしれませんが、今回は私からもお願いします。心の傷から立ち直らせる機会をくださいませんか?」

「ソフィア会長まで……」


 まあ僕もあのときは肝が冷えた。


 この世界では死は隣り合わせである。

 だから強くなることに執着することは悪いことではない、とは思う。


「一クラスで3人ずつなら63人ですよね。講師は他には?」

「本来なら一人ですので、付けてももう一人ですね」


 この前まで3人に教えるのでも大変だったのに、そんな人数僕が一人で教えきれるわけがない。


「それだと半分でも32人くらい……練習メニューは?」

「はい、毎年行っているメニューはこちらです」


 束の資料を渡される。

 用意がいいな……。


 すらすらと眺めていると、僕はふっと目を閉じ、途中で読むのをやめた。

 

「気が変わりました。私に講師料は一銭もいりません」

「まさか、お断りに?」

「そ、そんな……」

「いえ、受けはしますが二人ほど生徒から補佐を付けさせてください。その人たちにも講師料はいりません。私から別途講師料はその二人に払います」

「どうして……」


 講師料を断ったのは二つ目の頼みを通しやすくするためだ。


「その代わり、もし私達が教えた生徒がスカウトされた割合が他の人より多かった場合は、この講師の付け方、いえおそらく生徒への教え方も含め、即刻改めてもらいます」

「「!?」」

「それが、この講師を受ける条件です」

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