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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第20章 夜郎自大
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第152話 講師

 夏休みが開けて暫くして。


 いつものように聖徒会で作業をしていると、ソフィア会長が扉からひょっこり顔を出した。


「シエラさんはいますか?」

「はい、どうかしましたか?」

「学園長がお呼びです。一緒に付いてきていただけますか?」

「はい……」


 学園長の呼び出し……?

 なんだろう、すごくいや~な予感がする……。




「もうすぐ魔術大会と武術大会の時期ですね」

「まじゅつ……たいかいと、ぶじゅつたいかい?」

「あら、ご存知ないのですね。聖女学園で毎年行われている行事です。各クラスで魔法と武術で秀でた3名ずつが出場するトーナメント形式の大会です」

「何故、そんな大会を?」

「戦闘実技の教科だけでは測れない才能を皆様に視ていただくためですよ」

「皆様……?」


「魔術大会と武術大会は何百という貴族や王族、会社などの組織が毎年スポンサーになっていて、そのスポンサーの貴族や雇い主が見に来るんです。代表選手は、卒業後の就職先を獲得するチャンスですから、皆張り切るんですよ」


 なるほど、単純に強い人を決めるだけの大会ではないんだ。


「魔術大会と武術大会は別々に行われるのですか?」

「はい。別日程で、毎年魔術大会が先に行われます。2日かけて行われ、アイテムなどは一切持ち込めず、皆同じレベルの装備で戦うことで、純粋な戦闘力を競うんです」

「ということは、魔術大会と武術大会に両方出場する人もいるんですか?」


 そう聞くと、ソフィア会長は目を丸くし、その後ジト目になった。


「……シエラさん、普通の人はどちらかの才能に優れていたら、それだけを伸ばそうとするものですよ」


 諭すようにそう言われると、なんだが僕が非常識みたいじゃないか……。


「2、3年生は魔法科から魔術大会の参加者、騎士科から武術大会の参加者を決めるのが通例ですが、1年生はまだ分かれていないので、どちらでも参加はできますが……。もしかして、シエラさんは両方に出場するつもりですか?」

「いや、両方に参加なんてしたら流石に怪しまれるでしょう……。それに、スポンサーが見に来るのに私が2枠を占有してしまうのは流石に……」

「あら、『そんなことできない』とは仰らないのですね」

「……」


 だって、こんなステータスのお化けと戦ったらどうなるかくらい分かるじゃん……。


「シエラは学園ではただの魔術師で通ってるんですから。両刀だなんて知られたら益々怪しまれちゃうじゃないですか……」


 この間は刀術士だったけど、学園の外だったから許してほしい。


「正直、魔術大会すら辞退したいんですけどね……」


 聖女に就職なんて概念が薄いから、僕のために枠を消費してしまうのは申し訳なさ過ぎる。


()()()されれば辞退はできるでしょうが、普通は辞退する人なんていませんから、辞退した方が逆に怪しまれると思いますよ?」

「……」

「それに、私は正々堂々と戦ってみたいですけどね。負けることは決まっていても、挑む権利くらいは欲しいです。まあ、私はもう会長権限を使ってしまったので、あとはお願いすることしかできませんが……」

「まあ、もう一つくらいは聞きますよ……。1つ目は私のためにしてくださったようなものですから」

「ふふ、言ってみるものですね。そういうところが、シエラさんの素敵なところです♪」


 なんか割り食ってる気がする……。




 学園長室に着くと、ソフィア会長が扉を開ける。


「ようこそ、シエラさん。ソフィアさんもありがとう」


 ぱたりと閉めると、アナベラ学園長は腰を低くする。


「ソラ様、本日はお願いがございます」

「それはソラとして、ですか?シエラとして、ですか?」

「どちらでも構いませんが、今後二、三年生になったときのことを鑑みると、シエラさんの方がよろしいかもしれません」

「なら、どうか敬語はお止めください」


 年配に遜られるのは逆に怖くなってしまう。


「では、シエラさん。魔術大会と武術大会がもうすぐ開かれるのはご存知ですか?」

「……」


 僕とソフィア会長は顔を見合わせ、それから学園長の方を向く。


「学園長、実は先程までその話をしていたのです」

「それなら丁度よかったですね。シエラさん、大会が始まるまでの間、代表選手の講師をしてみる気はありませんか?」

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