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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第19章 脚下照顧
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閑話42 境界線

【エレノア・フィストリア視点】

 ボクは馬鹿か。


 感謝を伝えに行くだけだったのに、どうしてその相手をこんな仕打ちにしているんだ。




 ボクはソラ様を担ぎ上げると、急いで部屋へと連れていく。




 バタンとソラ様の部屋の扉を開けると、一人のメイドさんがいた。


「エレノア様?」

「あなたは確か……」

「聖女院メイドのシスカと申します。エルーシアは今日はお休みです。それで、ソラ様にいったい何を?」

「実は……」


 ボクは先程までの経緯を説明した。




「何をやっているんですか、あなた様は……」

「面目ない……」

「ソラ様もエレノア様も、このままでは風邪を引いてしまいます。ソラ様は着替えさせておくので、着替えてきてください」


 シスカさんにそう言われて着替えてくる。




「ソラ様は?」

「安静にしていれば起きると思います」

「そうか……」


 ベッドで寝ているソラ様を見て、ボクがそうさせてしまったのだと思いたいそう悲しくなった。


「それはそうと、まだ()()()のようですね……。ソラ様のがとてもご立派なおかげで、着替えさせるのが大変でしたよ……」


 ボクもソラ様の()()()が大きくなっているときを間近で見ているから、その大きさには大層驚いた。

 今も()()()()()()をしており、とても窮屈そうだ。


「ピンピンに張っていて辛そうだが、解放してあげた方が良いのではないか?」

「ソラ様から手淫の同意は得ているのですか?」

「いや、いないが……」

「なら睡眠レ●プ魔になってしまいますよ」

「そ、それもそうか……」


 シスカさん、案外毒舌な人のようだ。

 苦しそうにしているが、ボクには見ていることしかできないなんて……。




「……はっ!?」


 そんな下世話な話をしていると、ソラ様がやがて目覚める。


「僕は……のぼせて……」

「ソラ様!よかった……!」


 本当によかった……。


「浮かれていたとはいえ、こんなことになるなんて……。謝っても許して貰えないかもしれないが、本当にすまなかった!」


 真っ先に土下座をする。


「そんな、顔を上げてください……」


 いくら友達同士だったとしても、やっていいことと悪いことはある。


「いや、親しき仲にも礼儀ありだ。本当に申し訳なかった……」

「謝罪を受け入れます。もうこんなことはしないでくれれば、それでいいですから……」


 そこでソラ様は服を着ていることに気付いた。


「ボクが運んだんだ。その、故意ではないが見てしまったことは謝罪するよ」

「私がお着替えをさせていただきました。その、見てしまったことは謝罪いたします……」


 ボクに続いてシスカさんが頭を下げる。


「意識を失ってもしばらく()()だったから、解放してあげたかったのだが、流石にソラ様の許可がないことにはね……。」


 ソラ様は再びボクの方を向くと、可愛らしく顔を赤くして恥ずかしそうにした。


「ソラ様が倒れる前に言っていたことなんだが、不安になるのはボクも同じだ。ボクだってソフィアが現れるまではよく気味悪がられて友達なんていなかった。それに、君に絶交をされてしまったら、ボクはもう立ち直れなくなるだろう。今だって君が友達を止めたいと言われたらと思うと怖くて、内心必死になっているんだ……」

「エレノア様……」


 ソラ様が不器用だと言うように、ボクもボクで不器用だ。


「だからボクと親友に、なってくれないか?」


 ボクは初めて誰かに命令されることなく、人間関係を変えようと提案した。

 だから不器用同士、気が合うと思うんだ。


「親友……」

「親友として、もうソラ様に迷惑をかけることはしない。もう誘惑することもしないと誓おう。だが、気が向いたら妾にでも貰ってくれると嬉しい。ボクが好意をよせていることはこれで伝わっただろうからね」


 それ以上の関係は、ソラ様が望んだときだけにしよう。

 あの(境界線)を見た時に、ボクはそう決めた。

 もうこれ以上、ソラ様にもたれ掛かるのはやめるんだ。


「随分と僕に都合のいいことを並べられている気がするんですが……」


 その感想に、ボクは少しだけ安堵を覚えた。


「何言ってるんだい?こんなにもボクにとって都合のいいことばかり並べ立てているというのに……」


 それがボクが不器用なりに露にした本心だった。


「親友に、様はいりません……」


 嬉しい言葉に、思わず目を見開く。

 やがてそれが愛おしく感じてくると、ゆっくりと目を瞑ってその言葉を噛み締めた。


「それは、お互い様だろう?ソラ()

「……学園では怪しまれないように様をつけますからね、エレノア()()


 今から彼のために何ができるだろうか。

 それを考えるだけで毎日が楽しくなる気がした。

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