閑話3 学園長
【アナベラ・クロース視点】
二階の学園長室からは、受験生が並んでいるのがよく見える。
「今年は、リリエラ・マクラレンさんかしら……」
毎年やっているけれど、別にサクラ様と対峙した時のような感動を味わえるわけではない。
ただほんの少し成績トップになりそうな受験生に、立ちはだかる壁として相手をしてあげようとしたのが『気まぐれ』の始まりである。
◆◆◆◆◆
突如後ろの窓からびゅうと風が入ってくる音が聞こえ、目をやる。
「サクラ様、窓から入らないでくださいよ……」
「ふふ、ごめんなさいね。 アナベラ先生」
サクラ様とは教師と教え子の関係でもある。
軽口くらいは言い合える仲ではある。
常識は守ってもらいたいけれど、聖女さまに常識を求めるのはお門違いだということはサクラ様で学んだ。
「今年は、どう?」
「リリエラさんにしようかと」
「マクラレン侯爵令嬢……なるほどね」
サクラ様は目を閉じる。
「――告げる――」
し……神託!?
周りの部屋に響いていないということは、これは私個人に向けられた神託であるということを意味している……。
私は膝を付き頭を垂れると、その時はやってきた。
「――今期受験生となるシエラ・シュライヒは、大聖女ソラの学生としての名前である」
なん……ですって……!?
「当人は極めて平穏に学生生活を過ごすことを望んでいる。 よってこの事実を当人の意思以外で他言してはならない――」
サクラ様とソラ様でこんなにも対称的な選択をなされるとは……。
サクラ様は優しそうな声で「もういいわよ」と言うと、私は顔を上げる。
「これはお願いだけど、政治利用されそうになったらそれとなく助けてあげて。 以上が私とエリス、それから聖女院からのお願いよ。 よろしくね」
ああ、責任が重すぎる……!
ストレスでどうにかなってしまいそう。
いっそのことソラ様がご卒業なされたら、学園長の席を誰かに託そうかしら……。
「それとソラちゃんだけどね、私は手加減してもらっても勝てなかったほどには強いわよ? 私なんかよりよっぽど戦闘慣れしていたわ。 やりたいなら急いだら?」
サクラ様ですら手加減された上に負けたですって……!?
大聖女さまのそのお力の一辺にでも触れてみたい。
私は放送室に駆け出した。
◆◆◆◆◆
「あら、校長先生。 今年はどなたを?」
放送室にいた先生に一言放つ。
「シエラ・シュライヒさんを呼んで! 今すぐに!!」
言うと同時に、多目的ホールに駆け出す。
ああ、こんなにワクワクするのは久しぶりです!




