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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第18章 独学孤陋
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第141話 試行

「そういうわけですので、私達はしばらく各地を回ります」

「「「各地を、回る……?」」」


 不穏な単語に全員がハモるが、わざわざ行かない人に説明はしなくてもいいかな。


「エレノア様にはワープ陣を渡していますから、多分任意のタイミングで帰ってくると思います。なので先にフローリアさんとミア様は寮にお返ししますね」


 元々エレノア様の捜索が目的だったんだし、もう二人を付き合わせる必要はない。


「ありがとう」

「エルーちゃんとステラさんは、ギルドに疫病の依頼の報告をお願いできますか?」

「ソラ様は一緒に行かれないのですか?」

「いや、私は今行くと樹下さんと鉢合わせそうだから……」


 次に会ったら絶対逃がしてくれなさそうなんだよな……。


「ぷっ……」


 あ、エルーちゃんが吹き出した。


「もう、笑うならいっそ盛大に笑って……」

「ちょっと、いくら一番弟子の水の賢者様とはいえ失礼ですよっ!去り際の台詞、とってもかっこよかったじゃないですかっ!?」


「……何かあったの?」

「なんでもないです……」

「それはですねっ!」


 僕が誤魔化すも、ステラさんがまるで英雄譚のように語り始めた――




 英雄譚(公開処刑)が終わった頃には、みんなぷるぷると震えて声もなく笑っていた。


「お、乙女の……秘密……っ……ふふっ」


「もう死にたい……」

「みなさん!なんで笑うんですかっ!」


 僕の膝に座って撫でさせてくれるステラさんは、やっぱり優しい。


「ステラさんだけは、大人の悪意に染まらずにいつまでも純真無垢でいてくださいね?」

「あ、あなたよりも年上ですよっ!!!!」




 ミア様とフローリアさんを送り届けた後、エルーちゃん達と合流する。


 結果として、樹下さんはいなかったらしい。

 ワープスクロールで戻ってきちゃったから、樹下さん達より先に戻ってきてしまったのかも。


 エルーちゃん達を見つけてもついてきそうではあったから、会わないのならそれに越したことはない。

 問題を先送りにしているだけのような気もするけど……。





 まずはエルーちゃんと初めて周回したハインリヒの迷宮に向かう。

 フレイマーオークキングが『魔力のグミ』を落とす迷宮だ。


「ちょっと実験してもいいですか?」

「いやな予感しかしないのですが……」


 エルーちゃんは完全に僕を疑ってかかるようになってしまった……。


 修行の内容は至極端的で、ボスを倒すだけなんだけど、今回は以前のように周回はせず、ワープ陣をボス部屋に置くことにした。


 フレイマーオークキングの迷宮を回っているとき、ボス部屋でフレイマーオークキングと一緒に出てくるフレイムオーク10体のドロップアイテムである『炎の魔石』を無視していたところ、二週目でそれが残っていたことに気づいた。

 これはこの世界に来てからの気付きだ。


 入り口からボス部屋の位置が同じであるという既知の事実から、僕は「ボス部屋は毎回生成されているわけではなく、ボス部屋に至るまでの道とボス部屋のモンスターだけが入る度に生成されているのではないか」という仮説をたてた。


「じゃあ移動するよ」


 仮説は見事に正しく、ボス部屋に置いたワープ陣は消えてなくならず、迷宮の外のワープ陣からボス部屋に直接来てもボスは出現した。


 ただこのやり方には少し懸念点問題があった。

 ワープ陣は僕達だけでなく、魔物も移動できてしまう。

 魔除けのクラフトアイテムで近寄れなくは出来るが、迷宮のボスともなるとそれも効かないため、迷宮のボスがワープ陣を使って移動できてしまう。

 厄介なのはワープ陣の移動先は移動した本人の意思に依存することだ。

 僕はこれまでワープ陣を置きまくっていたから、もしボスがワープ陣を踏んでしまったら、それらのどこにボスが現れるか分からないのだ。

 これは非常にリスクが高いので、今までは試すのをためらっていた。


「これでもっと早く周回ができるね!」

「ふえぇ……」


 ここからは、楽しい愉しい周回のお時間だ。

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