第137話 姉妹
「おや、マリエッタお姉ちゃんをご存知なのですかぁ?」
「知ってるも何も、ねぇ……?」
僕はエルーちゃんと顔を見合わせた。
「ステラ様、マリエッタ先生は私達のクラスの担任の先生です」
「ええっ!?お姉ちゃんの生徒さんですかっ!?」
口調も見た目も、ツインテールなところ以外は似ているとは思ったけど、この世界の小人族はまだマリエッタ先生にしか会ったことがなかったから、種族的な特徴なのだと思っていたよ……。
まさか、マリエッタ先生の妹さんが偽弟子の正体だったとは……。
聖女院クラフト研究室のアンネ室長とマリエッタ先生が聖女学園生の同期だって聞いていたから分かってはいたけれど、二十歳のステラさんが妹ということは、それ以上であることは確実なんだよね……。
流石にアンネさんに年齢を聞くのは気が引けたので聞かなかった。
マリエッタ先生の年齢は僕の中では深淵を覗くようなものだ。
マリエッタ先生が何歳でも、僕にとって癒し手であることに違いはないからね……!
「あ、あの……もし良かったら、抱っこさせてもらえませんか?」
手をわきわきとさせる僕。
リリアンナ王妃のこと言えなくなってしまったな……。
「どうしてですかっ!?」
「最近癒しが足りなくて……」
「お、お姉ちゃんは抱っこさせてくれたかもしれませんがっ!私は誰にでも気安く触らせたりしませんからっ!」
「ご、ごめんなさい……。私、可愛いものが好きなんですけど、気持ち悪いですよね……」
「気持ち悪い……?どうしてですかっ?」
「お祖母ちゃんがいた時は部屋に可愛いぬいぐるみとかを置いていても許してもらえていたんですけど、居なくなってから母や姉に全部処分されたんです。『ぶりっ子がって、気持ち悪い』と言われていたので、きっとそれが普通の感性なんですよね……」
「シエラ様、そんなことありません。私はとても可愛らしい趣味だと思います」
「貴族のことは分かりませんが、他人の趣味を否定していい道理にはなりませんっ!それはその人達の感性が普通ではないだけですっ!」
一通り怒ると、向かい側の席に座っていたステラさんが僕の膝の上に座った。
「ほ、ほらっ!私を好きにしていいですから……今日は特別ですよっ!」
ツンツンとしているが、優しいステラさんに僕は甘えて抱きつく。
ああ、姉妹揃って癒される……。
「ステラさんはどうしてフィストリアに?」
小人族の里は南の国のはずだ。
「私は口減らしみたいなもんですねぇ。長女のお姉ちゃんは聖女学園に通うため真っ先に家を出ていきましたが、私は半ば強制的に出ていかされたんですよぉ。うちは大家族でしたから、食費が馬鹿にならないんですよっ」
「そ、そうでしたか……すみません、立ち入ったことを……」
不謹慎なことは分かっているけど、マリエッタ先生みたいな癒しが沢山いるなんて今想像するべきではなかったな……。
「気にしてませんよ、小人族は元々そういう考えの種族ですからぁ」
「ありがとうございます」
膝の上に座る存在を尊く撫でる。
「さ、麓に付きましたよ。行きましょう」




