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男の大聖女さま!?  作者: たなか
第17章 亢竜有悔
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第131話 非凡

 フィストリアから聖国側に進んだ山岳の麓辺りから入れる炭鉱のような入り口。


「着きました。ここが目的の迷宮です」

「め、迷宮に入るのですか!?」

「ああ、またあれをやるのですね……」


 エルーちゃんが目を細くした。


「あれとは……?」

「まあやれば分かります。経験者として先輩から何かアドバイスはある?」

「そうですね……。今日は地獄を見ることになりますから、覚悟をしておいてくださいね」

「ヒ、ヒィッ……!?」


 行く前から怖がらせないでよ……。




「さて、入る前にルシアさんにはこれを」


 僕はいつも通り『漆黒のワンド』と『精霊のネックレス』、そして『修練の指輪』を渡す。


「あ、あの……お、お情けは光栄にぞ、存じますが……私にはオフィがおります故、どうか御容赦を……」


 ちょっ!?


「ち、違いますから!これは経験値を上げる『修練の指輪』ですっ!」


 なんで告白してもいないのにフラれているんだ、僕は……。

 既に恋愛マスターとしての威厳はゼロどころかマイナスだよ。




「さて、まずはルシアさんのレベル上げもかねて普通に行きますか」

「……普通以外の方法があるというのですか?」

「……やっぱりあれは普通ではなかったのですね……」


 エルーちゃんの言葉の節々に棘があるなぁ……。


「今回は時間もないですから、あの時の倍以上早く行くよ」

「あ、あれの倍以上ですか!?一体どうやって……」

「まあそれは二周目のお楽しみということで」

「ひぃぃ……」


 ひぃぃて……。


「め、迷宮を二周もするのですか!?」


 いや、二周どころじゃないよ。


 エルーちゃんはルシアさんの手を取る。


「ルシア様、今日はお互いに死なないように頑張りましょうね!」


 僕がいるんだから死なせはしないよ。




 注意事項を説明しているとやがて魔物がやってきた。


「ロック・ゴーレム!?Bランク相当の敵ですよ!」

「作戦通りにいけば大丈夫ですよ」

「ルシア様!」

「はい!」


 ルシアさんが風魔法、エルーちゃんが水魔法の準備をする。


「先手必勝です!」

「「氷結の息吹き(フリーズ・ブリーズ)!」」


 水と風の合成魔法はこのロックゴーレムと相性が良い。

 数回放つとゴーレムのコアに大きく傷が付き、その機能を停止する。


「や、やりました!」


 そもそも風属性を弱点とするゴーレム種がわらわらと現れるこの迷宮を選んだ理由は、今後一人で倒せるようにするためだ。

 今は合成魔法で倒しているので二人に均等に経験値が行くが、一人で倒せるようになった方が効率が良いからね。


「道中のドロップ品はルシアさんとエルーちゃんで半分こしていいですから、この調子でじゃんじゃん行きますよ」

「は、はい!」




「ここがボス部屋……」

「相手はアイアンゴーレムです」

「お分かりになるのですか?」

「勿論。初めからここのボスとドロップ品目当てですから」

「アイアンゴーレム……勝てる気がしないのですが」

「ルシアさんはそろそろ上級魔法が使えるはずですから、作戦通りで大丈夫ですよ」


 ゴゴゴゴと唸り声のような地響きとともに起き上がる鉄のゴーレムと対峙する。


「ルシア様、私に合わせてください!」

「はい、賢者様!」


 僕は無言で前に出ると、ゴーレムの腕振り下ろしをリフレクトバリアで弾き返す。


「「氷結の(グレイシア・)大嵐(テンペスト)!」」


 上級合成魔法で凍らせてコアに傷を付け、あっさりと散ってゆくアイアンゴーレム。

 この間の迷宮よりはレベルも低いから回りやすいね。


「はい、『防御のグミ』。人数分ありますからひとつずつ。私の分はエルーちゃんにあげます」

「またグミ漬けなのですね……」


 しょうがないじゃん。

 これが手っ取り早いんだから……。


「さ、戻りましょう」


 魔法陣の上に乗り迷宮の外に戻る。




「私がこんなに強くなるとは……」

「最初だから壁役をやりましたが、次からは必要なさそうですね」

「やっぱり二周目をやるのですね……」

「今日で何周回れるか、楽しみですね」

「「…………」」


 僕のその台詞に賛同した者はいなかった。

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