表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男の大聖女さま!?  作者: たなか
第17章 亢竜有悔
165/1282

第129話 胡座

 オフィーリアさんからルーと言われたハイエルフの人は、一目散に僕のもとへ来ると、膝をついて頭を垂れた。


「ちょっと!ルー、何をしているの!?」

「状況をお伝えするため、旧姓を名乗ることを御許しいただけませんでしょうか?」


 きゅうせい?

 ……ああ、姓を名乗ろうとしているのかな?


「構いません。やはりあなたは、ハイエルフの方ですか?」

「はい。ルシア・ノイン・ハインリヒと申します」


 えっ、ハインリヒ家なの!?

 でも、ミドルネームがツェンじゃないということは、ファルス王の子ではないのかな?


「ソフィア王女のご親戚の方ですか?」

「ソフィアをご存じなのですね。私はファルス王の前王ルルベルの娘でした」


 ん……?


「……でした?」

「はい。お恥ずかしながら私はハインリヒ家から勘当された身でございます。ですので、今はただのフィストリア支部副ギルドマスターのルシアでございます」


 か、勘当!?

 旧姓ってそういうことか……。


「ちょっと!私を置いて話を続けないでよ!」

「お黙りなさい!オフィ、まだ分からないの!?このお方は、大聖女(かなで)(そら)様よ!」

「は……?」


 それを合図に、僕はウィッグを取る。

 ぱさりと落ちるウィッグに、オフィーリアさんは声にならない叫びをあげた。




「ソラ様、オフィが何か粗相をしてしまったと見受けられますが、仔細をお聞かせ願えませんでしょうか?」


 僕は先程の魅了魔法の件を話した。




「……オフィ、あなたなんてことをっ!?」


 良かった。

 少なくともルシアさんはまともな考えのようだ。


「先程の発言からギルドの運営に王家も関与しているようですので、この事はアレクシアさんに報告しておきます」

「そ、そんな……。私はただ、実力を見定めるために……」

「魅了魔法や使役魔法は召喚魔法と違って、対象に魔力などの対価を何も与えないものです。もし実力を見定めるためだったとしても、魅了魔法である必要はなかったはずです」


 ルシアさんは何度目かの頭を垂れた。


「ソラ様、それは何卒御容赦いただけませんでしょうか……?」

「ソラ様、私も別にソラ様にすぐ助けてもらったから、そんなに怒らなくても……」

「ミア様まで……」


 エルーちゃんに介抱されていたミア様も、いつのまにか話に参加していた。

 僕が敏感すぎるだけなんだろうか……?


「ルシアさん、何故そこまでしてオフィーリアさんの肩をもつのですか?」

「それは……」

「あ、あの、もしかしてあの有名なルシア王女様ですか?」


 突如ミア様が遮る。


「……有名?」

「ああ、ソラ様は知らないよね。ハイエルフの王族でダークエルフの方と駆け落ちされたことで有名なの」


 か、駆け落ちしたの!?


「ってことは、駆け落ちした相手って……」


 そこまで言うと、ルシアさんは恥ずかしそうに俯いた。


「ちょ、ちょっと待ってください!ということは、オフィーリアさんはさっき魅了魔法で浮気をしようとしてたんじゃ……」


 魅了魔法を他人にかけるということは、そういうことしたかったってことだよね……?


「オフィ……あなた私というものがありながら、そんなこと考えていたの!?」

「だ、だって……最近ご無沙汰だし。ダークエルフは種族柄、欲求不満になりやすいの」

「な、何もソラ様の前で言うことないじゃない!」


 なんか一気に低俗な問題になってしまった……。

 この世界の人達はそういうのに開放的な人が多い気がする。


「お二人のあれこれはどうでもいいですけれど、仮にその欲求不満が解消されたとして、二度と恋人以外に対して魅了魔法を使わないと誓えますか?」

「……それって、魅了してから恋人になれば良いのですよね?」

「オフィ!いい加減になさい!」


 浮気する気満々じゃん……。

 むしろ今までよくそれで持っていたよ。


「どうしてこんな人がギルドマスターに……。ルシアさんの方がよっぽどギルドマスターに向いていそうなのに、どうして変わらないんですか?」

「私には無理なんです。ギルドマスターになるにも、Sランク冒険者である必要がありますから。緊急時なら一時的にAランクでもなれることはありますが、私はただのCランク魔法使いですし……」

「基本的にSランクは偏屈者の集団。余程の面白い出来事や腕試しをされないと、捕まらないのですよ。だから私は間違ったことをしていないと主張しますよ」


 オフィーリアさんはそう言うが、それではSランク基準で物事を考えすぎて、それ以下の人のことをなんにも考えていない。


「……そうだ、ルシアさん。ギルドマスターを目指してみる気はありませんか?」

「ですから先程、私では無理だと……」

「一時的にあなたを弟子にとります。あなたをSランク相当の実力にさせるだけなら、多分一日あれば出来ると思います」

「!?」


「ふふふ、ここのギルドマスターは私です。ここではSランクは私が認めなければなれませんよ?」


 なぜこうも悪役チックなのかね、この人は……。


「あなたに認められなくてもSランクになる方法はいくらでもありますよ。ワープ陣でハインリヒまで行ってフォードさんからギルドマスターに認めてもらうこともできますし、使う気はないですけどそもそも私はESランクなので()()でルシアさんをSランクに任命することだってできます」

「大聖女様が、エクストラランク!?」


 まあ流石にそんなことしないけどね。


「でも、もっと手っ取り早い方法があるでしょう?」

「ま、まさかっ……!?」


 エルーちゃんが気づいたようだ。

 そう、聖国支部でエルーちゃんがフォードさんを負かしたように、ルシアさんがオフィーリアさんを負かしてしまえば認めなくてもSランクだ。


「そこで胡座をかいているSランクくらいなら、多分二日もあれば抜けると思いますから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ