表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男の大聖女さま!?  作者: たなか
第16章 怨望隠伏
162/1283

閑話34 与太話

【エルーシア視点】

 目を覚ますとソラ様がいらっしゃいませんでした。


 机に置かれていた書き置きには「少し調べておきたいことがあるので出掛けています」と書かれておりました。


「またご無理を……」


 何度言っても聞いてくださらないのですから、きっとソラ様の性分なのでしょう。


 ソラ様のお力を疑っているわけではありませんが、何もないことをエリス様にお祈りしておきましょう。


<またソラはこの子を置いて……。さてはあの子、魔性の女ね……>


 そう脳内で聞こえてきたのはエリス様、ではなく聖獣テティス様です。


 しかしどうやら誤解がおありのようです。


「テティス様、それは誤解です……」

「ん……エルーちゃん、どうしたの?」

「独り言かしら?」


 ミア様とフローリアさんを起こしてしまいました。


「い、いえ。実は、ソラ様にご紹介いただいて水の聖獣テティス様からご加護をいただいたのです」

「「ええ!?」」

「ご加護をいただくと、テティス様と離れていてもお話が出来るそうで、お話をしていたのです」


<ちなみに、念じれば喋らなくても聞こえるわよ>

<そ、そういうことは早めに教えていただきたかったです……>


 恥ずかしい思いをしてしまいました。


「愛されてるねぇ……」


 ミア様が私の頬をつんつんとしてきました。


「そ、そんなことは……」


 以前お情けをいただいたときに断ってしまいましたから、きっとソラ様にはもう呆れられてしまっているかもしれません。


<で、何が誤解なの?>

<……ソラ様は殿方です>

<は……?>

<ですから、ソラ様は女性ではなく男性です……>

<え…………>


 私の手の平が疼く感じがしました。


「ぇぇえええええ!?」


 突如、手の平のテティス様の加護の証が青く光り出すと、私の手の平から魔法陣が現れ、その中からテティス様が飛び出してきました。


「テ、テティス様っ!?」

「ど、どうしてここに……」

「ビックリしすぎて飛び出しちゃったじゃない……」

「飛び出せるのですか……?」

「あれ、言ってなかったっけ?」

「……はい」


 あまり聖獣様のことは悪く言いたくはありませんが、テティス様はおしゃべりが好きすぎて御自身が何を言ったのか、何を言っていないのかを覚えていらっしゃらないことがよくあります。

 歴大聖女様から「脳死おしゃべり人魚」などと評価されていらっしゃる所以でもあります。


「ごめんごめん。加護を与えるとちょっと魔力をもらってこうやって行き来が出来るのよ。これは召喚とは違うものだから、魔力は魔法陣の分をもらうだけだし、私の意思で行動するけどね」


 召喚ではないので命令はできないということなのでしょう。


「びっくりしすぎて目が覚めちゃったわ……」

「あら?エルーシアのお友達?」

「はい。寮母のフローリアさんと、同寮のミア様です」

「聖獣テティスよ。よろしくね」

「よ、よろしくお願いします……」

「……って、それよりさっきのことよ!」


 びたんと尾を反り返り私の方を向かれます。


「ソラが男の子って本当なの!?」

「「あっ……!?」」


 フローリアさんは既に知っていらっしゃるから問題ありませんが、ミア様は存じ上げないはずです。


「テティス様、その情報は機密事項です……」

「え、そうなの!?エリス様、どうして教えてくれないのよ……」


 エリス様にも信用されていないのですね……。


「……ごめんなさい、やっぱり聞いちゃいけないことを聞いちゃったんだよね……?」


 ミア様は驚くのではなく、何故か申し訳なさそうにされておりました。


「い、いえ……流石に今のは事故ですし……」

「……実はソラ様がフローリアさんに話しているところを聞いちゃって。だからソラ様が男性なのは知っていたの……」

「ええっ!?」


 ミア様は深々とフローリアさんに謝られました。


「勝手に盗み聞きしてすみませんでした……」

「し、仕方ないわよ。そのうちばれていたかもしれないのだし」

「実はまだソラ様にも伝えていなくて……。私、伝えるべきなのかな……?」


 壁際でしゅんとしているテティス様に「大丈夫ですか?」と声をかけると「撫でて」と仰られたので私は頭を撫でました。

 こんなテティス様は初めて見ました。

 ソラ様が殿方であるということに、それほどまでに驚かれたということでしょうか。


「これまでソラ様は幾人かに本当のお姿をお話しておられますが、その際に決まって仰られていることは『男がこんな格好をしているの、気持ち悪いですよね』です」

「そ、そんなことないよ!女の私より可愛いんだから、気持ち悪くなんて感じたことはないよ」

「そのことをソラ様にお伝えすれば良いと思います。ソラ様はいつも他人のことを考えてばかりで、御自身については後回しにされる方ですから」


「そっか、ありがとうエルーちゃん。あれ?そういえばソラ様は……?」


 ミア様は今更ながらきょろきょろとされました。


「こちらに聖印付きの書き置きがございました。『少し調べておきたいことがあるので出掛けています』とのことです」

「ふふ、本当に他人のことばかりね」

「そうですね」


 するとわなわなと震え出すテティス様。


「テティス様?」

「ど、どうしよう。ソラに男の子のアレがついていることが想像できないのだけれど……」

「それには同感です、テティス様。私なんて普段一緒に過ごしていても、ソラ様が男の子だと考えたことすらなかったですから」


 4人でうんうんと異口同音に頷いてしまい、その光景に思わず笑ってしまいました。


「ふふ、でもエルーちゃんは日頃お世話しているのだから、見たことはあるんじゃ?」

「はい。一度だけ間近で……」

「ど、どうだった?」

「その、逞しくて神秘的でした……」


 顔が赤くなる感覚に溺れながらそう話します。


「私はソラ様の、掴んだことがあるわよ」

「「「ええええっ!?」」」


 フローリアさんの暴露に、思わず3人でびっくりしていました。


「か、硬かった……?」

「いや、服越しだったけどふにふにしていたわ……」


 柔らかいのですね……。


 私はまたソラ様の神秘について知れて、少しだけ賢くなれました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ