表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男の大聖女さま!?  作者: たなか
第16章 怨望隠伏
161/1282

第127話 平穏

 翌日、昼に起きるという贅沢なことをした。

 まあ昨日寝てないから仕方ない。


「それで、エレノア様は見つかったの?」


 昼食をつつきながら僕は昨日の話をすることにした。


「はい。エレノア様は公爵家ではなく、正真正銘の王家でしたよ……」

「お、王家!?」


「ちょうどいいですから、その話をしながら王城に向かいましょうか」

「ど、どうして私たちも一緒に王城に行く必要があるのかしら……?」

「ソラ様といると、感覚が麻痺してくるよ……」


 呆れるフローリアさんとミア様。


「そりゃあ、エレノア様にお願いされましたからね」


 僕は手を合わせて「ごちそうさまでした」と言うと、食器を下げるために立ち上がる。


「次期女王様のお願いは、流石に断れないでしょう?」




「まさかエレノア様がアレクシア女王の実子だったなんてね……」

「それに、まさか野望のために子供を奪うなんて……。一体どこのドラマよ……」

「捕虜もお助けされて、まさにソラ様は救世主でございますね」


 僕も昨日の出来事は濃すぎてしばらく忘れられそうにない。


「さ、準備はいいですか?」

「い、今から王家と会うのよね……?」

「ききき緊張してきました……」


 エルーちゃんは日頃聖女と会っているから緊張しないと思ってたよ……。

 まあ初対面だもんね、無理もない。


「気楽に行きましょう。やさしい人達ですし、エレノア様みたいな人が二人いるようなものですよ」

「ふふ、エレノアちゃんが二人いたら朝は大変ね」

「ふふふ」


 アレクシア女王に失礼だけど、笑ってしまった。

 あんなけたたましいのは一人で十分だ。

 いや、別にエレノア様本人が出している音というわけではないけどさ……。


 ワープ陣から王城に行くと、シンシアさんがいた。


「シンシアさん、こんにちは」

「ソラ様!改めて、申し訳ございませんでした」

「気にしないでください、人質にとられていたのですから仕方ありませんよ」

「寛大なお言葉、ありがとうございます。そちらの方々は初めましてですね。エレノア殿下専属メイドのシンシアです。皆様のお話はエレノア殿下からお伺いしております。さあ、こちらへ」


 扉を開けた先では、アレクシア女王とエレノア様とアイヴィ王女がティータイムをとっていた。


「おや、早速来ていただけるとは」

「ソラ様!それに皆!」

「エレノア様!」

「エレノアちゃん!」


 がばっと抱き合うミア様とフローリアさんとエレノア様の三人。

 三人が一番長いつきあいだからね。

 また再会させることが出来て良かった。




「改めて、カナデ・ソラです」

「ソラ様専属メイドのエルーシアです」

「せ、聖女学園二年のミアです……」

「聖女学園朱雀寮寮母のフローリアです」


「フィストリアの女王アレクシアだ。」

「第一王女のエレノア」

「第二王女のアイヴィです。よろしくお願いします」


「私もエレノア様って呼んだ方がいいかしら?」

「よしてくれ、フローリアさん。ボクは王女って柄でもないだろう?」

「誇らしげに言うことじゃないぞ、この馬鹿」

「ボクはアレクシアを見て王がなんたるかを悟ったのさ」

「……それは私がガサツだと言いたいのか?」


 威圧するアレクシア女王にびびるフローリアさん達。


「まあまあ、お母様、お姉様。お二人とも朝に極度に弱いところは変わらないじゃないですか」

「な、アイヴィ……なにもソラ様のいらっしゃる前で言うことないだろう!?」

「いいえ、殿下には良い薬です。毎日起こすのが大変な我々の身にもなって欲しいです……」


 給仕をしていたシンシアさんはそう呟いた。


「ふっ、ふふ、本当に遺伝しているじゃないですか……」

「ソ、ソラ様まで……」

「こればかりは遺伝したくなかったよ……」

「お前の場合ははただ自堕落なだけだろう?」

「それ、お母様だけは言う権利がないと思いますよ」

「くぅ……娘の正論が響く……」


 アレクシアさん、最初こそ冷徹なイメージがあったけど、大分威厳がないというかなんというか……。

 良い意味で親しみやすい人なのかもしれないと思い始めていた。


「こほん……客人を前に失礼した」

「そういえば、人質にとられていた人達はどうなりましたか?」

「先程それぞれの家に帰ってもらいました。その節はありがとうございました。彼らには王家の事で迷惑をかけてしまったにも関わらず、ついてきてくれると言ってくれました」


 それだけアレクシアさんが慕われているということだろう。


「償いのためにも、今後の彼等の待遇は良いものにしていかねばなりません」


 その心意気があればきっと大丈夫だろう。




「皆の褒賞およびソラ様へのお布施はまた執政官殿と協議の末送らせていただきます。それとは別に、何かご要望はございますか?」

「うーん……特には。皆さんはどうですか?」

「はいはい!」

「ミア様?」

「こちらで最近話題の出来事ってありますか?」

「最近話題のものか……あ」


 何かを思い出したアレクシアさんは僕の方を向き直して話しかけた。


「一つソラ様にお伝えしておきたかった事柄がございます。実は昨日執事から小耳に挟んだことなのですが……」

「なんでしょうか?」

「なんでも北の国に大聖女様の弟子がいるという噂が立っているんです」

「あ、ああ……」


 それを聞いて拍子抜けしてしまった。


「それはソラ様が冒険者ギルドでご乱行なされた件だと思います」


 ご乱行て……。


「エルーちゃん、ひどい……」

「お、お可愛らしく涙目になられても、私……あの件は許しておりませんからっ!」


 そんなつもりはなかったんだけど……。


「ソラ様は、学園では大聖女様の弟子シエラ・シュライヒとして身を隠して通われているのさ」

「そ、そうでしたか……。無知を晒して申し訳ない。では、北の外れにある村の人々の病気や怪我を治したりしたのもソラ様でしたか」

「えっ!?」

「えっ……」


 何それ……?


「違うのですか?」

「そもそも私はフィストリアに来てからまだ宿と王城と冒険者ギルドにしか足を運んでいません」

「では、他に弟子を取られたりは?」

「あとはそこにいるエルーちゃんくらいですけど……」

「私もソラ様と行動範囲は同じですので……」


 ということは……


「ま、まさか……」


 僕の、偽弟子……!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ