第126話 実正
「エレノア様が、アレクシア女王の娘!?」
「まさか、あの時の我が子がエレノアだったと言うのか?」
アレクシア女王がそう聞くと、シンシアさんは頷いた。
「当時、陛下とリタ様は共にお子を成し、そしてお産のタイミングも同時でした。ですが、生まれた方の片方は産まれてまもなく、息を引き取ってしまったのです」
エレノア様ですら初めて聞かされることのようで、呆然と立ち尽くしていた。
「不運なことにも医師の不手際で、息を引き取ってしまったのがどちらのお子様にあたるのかが分からなくなってしまった。そこでリタ様とアレクシア殿下によってエレノア様がどちらの子だったのか調査を行ったのです」
「あ、ああ。それはよく覚えている。あの時は大層哀しんだからな……」
「そしてご自分のお子様が息を引き取ってしまったことを先に知ったリタ様は、その調査結果を殿下に御見せする前に揉み消し、あろうことかエレノア殿下が自らの子だとする事実をねじ曲げた書状をアレクシア殿下にお渡ししたのです」
「なんだと……!?」
「貴女、根拠はあるんでしょうね……?」
「ウィリアム様が亡くなられる前に、私はこの調査結果を託されました」
そこには、アレクシア女王との血と一致し、リタさんの子供ではないという旨の調査報告書があった。
「これはウィリアム様が独自に調査したものです。エレノア殿下がご自身とリタ様の子にしては似ていないことに疑問を感じたウィリアム様は、健康診断と称して王家の血液を確保し、調査を行わせました」
「あの時か……!?」
「これはエレノア殿下が、アレクシア殿下の第一王女であることの証明に他なりません」
シンシアさんは、リタさんを強く縛りつける。
「ウィリアム様はこの調査結果を私に託し、その後ウィリアム様はリタ様を追及しました。その結果ウィリアム様は、リタ様の口封じのために……そのためだけに暗殺されたのです」
「なんてことだ……」
アレクシア女王は組み伏せられるリタさんの前まで行くと、こう言った。
「リタ・フィストリア……いや国賊リタよ、貴様を王家暗殺の罪で拘束する。余罪は全て洗い出させてもらうぞ」
「っこのっ!?私はこんなところで終わるわけには……」
「獏!」
何かしようとしていたので、獏にお願いして眠らせることにした。
今後の方針も決めないとならないので、パーティーは中止となった。
僕の参加したパーティーはことごとく中止になってる気がするけど、大丈夫かな……?
「ソラ様、我が国を助けていただき、ありがとうございます」
「いえ、私はエレノア様を連れ戻しに来ただけですから……」
「ソラ様、ボクからも感謝させてくれ。まだ分からないことだらけだが、ソラ様のお陰で助かったよ」
「エレノア、流石に無礼だぞ」
「いいんですよ、エレノア様は学園では先輩ですし、同寮ですから」
「いや、ですが……」
「いいんだよアレクシア。ボクはソラ様と友達だからね」
「そういう生意気なところは変わらないな。全く、誰に似たんだか……」
「母親しかいないだろう?」
悪態をつきあうもその表情はやさしいものだった。
「ふふ、そうしていると仲の良い親子ですね」
「エレノアお姉さまが本当のお姉さまで私、嬉しいです」
「アイヴィは母親に似なくて良かったよ」
「この、何てこというんだエレノア!」
「ふふふ、仲良くしてくださいませ」
これじゃあどっちが子供なんだか分からないな……。
安心したら眠気が来てふらっとする。
「「ソラ様!?」」
「す、すみません……。昨日から寝てないので眠気が……」
「ご無理をさせてしまい申し訳ありません。本日はゆっくりしていってください」
「いえ実は寮生のみんなに無断で来ちゃったので、帰ろうと思います。皆心配していると思いますから……」
今頃僕を探しているかもしれない。
「そうでしたか。では後日あらためてお礼をさせてください」
「次は寮生のみんなも、連れてきてくれないか?彼女達にもお礼を言いたいからさ」
「はい!」
ワープ陣を置かせてもらい、エルーちゃん達がいる宿に戻る。
「「ソラ様!」」
「お帰りなさい!」
「勝手に出てってごめんなさい……」
「もう、いつものことでしょう?」
「う……」
それは言い返せない。
「ところで、どうしてメイド服なの……?」
「あっ……」
着て来たままだった……。




