第115話 手蔓
ハープちゃんに乗ってクロース辺境伯領まで向かう。
辺境で土地代が安いからなのかわからないけど、敷地はバカ広くお屋敷も同様に広い。
お屋敷の門の手前で降り、ハープちゃんを送還する。
「ソラ様!?」
門番の人が驚いていた。
ハープちゃんで移動していると目立つことこの上ないが、今は緊急だし許してもらいたい。
「あの、アナベラ学園長にお会いしたいのですが……」
ルークさんにお願いしてしたためてもらった書状を門番の方に渡す。
「拝見します。こ、これは聖印付きの書状!?ご案内いたします!中へどうぞ」
ルークさんのアドバイスで僕の聖印を付けたけど、こんなに効き目があるとは思わなかった……。
屋敷にお邪魔し、客間に案内されると、学園長を待っている間にライラ様が通りかかった。
「ソラ様、ようこそお越しくださいました。本日はどのようなご用件で?」
「ライラさん、ちょうどよかった。実はエレノアさんが行方不明になっておりまして……」
「エレノアが……!?」
ライラ様も同じクラスだし、何か知っているかもしれない。
「寮にも聖女院にも、学園にもいなかったのですが、他に行きそうなところとか、故郷とかについて何かご存知ないですか?」
「……申し訳ありません、わからないです。」
「そうですか……」
「ですが、彼女は北の方の文化に詳しかったので、そちらの出身ではないかと……」
「なるほど、北の国……」
すると、学園長が客間にやってきた。
「ソラ様、私に何かご用でしょうか?」
「実は……」
僕はさっきと同じ話を学園長にした。
「そうですか、エレノアさんが……」
「言えなかったらいいんですけど、何か知っていらっしゃらないかと思いまして……。エレノアさんは誰にも何も言わずにいなくなるような人じゃないはずですから、心配で……」
そこまで言うと、考えていた学園長は口を開いた。
「私も彼女の詳しいことは分からないのです。ただ、彼女の学園の授業料や入寮費用などは北の国から払われている、ということは事務の方から聞いています」
「やはり、北の国ですか……」
情報を聞けた僕はお礼に秘薬を渡して寮に戻る。
するとお買い物に行っていたエルーちゃんが帰ってきていた。
「そういえば、セフィーとシェリーとソーニャさんは?」
「ソーニャちゃんはいつも通り孤児院で寝泊まりしているわ。シェリルちゃんとセラフィーちゃんは確か、リリエラちゃんの別荘で一緒にバカンスを満喫しているそうよ」
相変わらず仲が良くて僕も嬉しい。
僕もいただいた情報を話す。
「そっか……北の国に……」
「シエラちゃん、北の国に行くの?」
「ええ。そのつもりです」
「わ、私も……一緒に行ってもいいかな……?」
ミア様が珍しく乗ってきた。
僕がソラだと知ってから神聖視しており、あまり自分の意見を言わなくなっていたから、少し嬉しかった。
「私、エレノア様には長い間お世話になってるから、恩は返せるときに返したいの……」
「そうだ、どうせなら皆さんで行きませんか?」
「……どういうこと?」
僕が考えたのは、僕が先に北の国に行き、ワープ陣を置いてあとでみんなでワープするという方法。
「でも、それじゃあソラ様だけが大変なんじゃ……」
「いいんですよ。こんなの使ってなんぼです!それに、たまには一人で行くのも悪くないですから」
「そ、そうよね……一人になりたいときもあるわよね……」
妙に物分かりのよいミア様、どうしたんだろう?
少し顔が赤い気がする。
「では、私は聖女院に伝えてから行きますから、皆さんは北の国への準備して待っていてください」
僕はそう言い残して寮を後にした。




