第109話 離縁
「涼花さん!」
僕も駆けつける。
「だ、大聖女様っ!?」
遅れて僕の登場にびっくりする周囲の人達。
完全に僕のせいだ……。
「涼花さん、大丈夫ですか?今、回復しますから……」
僕はキュアと唱えると、涼花様はか細い声で答えた。
「……大聖女様……?ここが、天国なのでしょうか……?」
いつもではありえないような弱気な発言に、僕は申し訳なさがいっそう増していた。
「涼花さん……貴女は絶対に助けますから!」
キュアが終わると、全力でヒールをかける。
「……聖女様、泣かないでください……」
いつの間にか垂れていた涙の存在に気付くと、その涙を拭うように手をさしのべ、その後安心したように涼花さんはすやすやと目を閉じた。
「……ふぅ……」
これでひとまずは大丈夫。
「すごい……」
「流石は大聖女さまだ!」
いや、そもそも僕があれを全部飲み干していれば、こんなことにはならなかったのだ。
「ソラ様、涼花を助けていただき、ありがとうございます……」
近くにいたライラ様が代表としてお礼を述べたが、僕は首を横に振った。
「いえ、それよりシエラがご迷惑をお掛けしたようで、申し訳ありません」
「そ、そんなこと……」
僕は元凶の毒の入ったワインを手に取ると、一気に飲み干す。
「大聖女様っ!そのグラスはっ……!」
涼花様が飲むのを見ていたのか、周囲にいた人達の中にはこれが毒だと気付いた人もいたようだ。
すぐさまキュアとヒールを両方発動して毒を治し、体力も回復させる。
「何々?いったいなんの騒ぎ?」
長蛇の列を作っていたサクラさんとソフィア王女達がこちらへ来ていた。
そこへライラ様が耳打ちで状況報告をする。
「今まで、幾度かシエラへの嫌がらせやいじめを見てきましたが、シエラの方にも問題はあると思いなにもしてきませんでした。ですが今回、涼花さんまで巻き込んでしまいました……」
「そ、それは……」
ソフィア王女が何かを言おうとしたが、途中で支えてしまう。
「シエラ一人が受けるのなら仕方ないと思っていましたが、周りを巻き込んでしまうのなら私も考えなければなりません……」
「ソラちゃん、何を……」
もうあの人達を家族と呼べないのは悲しいけれど、最初からこうすればよかったんだ。
<ダメ……!>
どこからか声が聞こえた気がしたが、多分気のせいだろう。
「シエラを……シュライヒ家から引き離し、私の養子にしようと思います」




