閑話277 背徳的
【奏天視点】
「ハイヒューマン?」
ある日、ふと妊婦の体調管理のために涼花さん達を『鑑定』したところ、涼花さんがハイヒューマンという種族名になっていたのだ。
「ええ。どうやら旦那様が大天使から現人神になられつつあることが原因のようです」
「えっ、いつの間に……」
自身を鑑定することなんて滅多にないから気がつかなかった。
鑑定したら『現人亜神』と出てきて、思わずなんだこりゃと首をかしげる。
「現人亜神って?」
「主が旦那様とその……する度に、旦那様は現人神に近づくようです」
「じゃあ、僕はそのうち現人神になるの?」
『そう。これぞ寵愛の証……!』
全く、何を言ってるんだか。
「現人神に近づきつつある旦那様とした者はその回数に応じて進化します。旦那様が進化すればするほど、妻達が神に近づいていくのです」
「なんだかウィルスみたいじゃない、それ……?」
シルヴィ、どや顔になっているところ悪いけれど、あまり良いこととは言えないかな……。
「皮膚の交換で起きるので、キス等でも起きますよ」
もっと質悪いじゃん。
そっか、もう手遅れか……。
『約束したでしょ?ソラ君はリョウカだけを天使にするつもりだったかもしれないけれど、私も別に一人に絞れなんて言ってなかったでしょう?』
そ、その想定はしていなかった……。
確かにそもそも涼花さんに限定していたのもそうだけれど、手段を聞かなかったのも悪かった。
「覚悟していなかった皆はどうしよう……。永く生きるの、苦痛になったりしないかな……?」
「だから旦那様に相談すべきだと忠告したのですよ」
なるほど、サプライズにしたかったのね……。
『うっ、ううっ……ごめんね……神ウィルス撒き散らして……』
「いや、怒ってるわけじゃないから」
神ウィルスってなんだよ、ナノマシンか何か……?
喜怒哀楽激しすぎでしょ。
『夜激しくて種を撒き散らしているのはそっちのクセに……』
「もぉーっ!心読まないのっ!!」
撒き散らしてるわけじゃないよ。
『それにさっき聞いたけれど、皆問題ないって言ってたわよ?』
「そういうことは先に言ってよっ!」
心配して損した。
好きな人にちょっかいをかける小学生か、おのれは。
『ごめんなさい。嫌いになった……?』
「う……」
こうしてちょつかいかける割には自信がなくなってすぼまっていくのがエリス様らしいというか。
だからこそ嫌いになれないんだよね。
「それで、次は二人の番だけど……」
『そ、それ……なのだけれど!』
「?」
すると何か言おうか悩むように、もじもじとし出す女神様。
『実はその……魂を救いたい子がまた出てきてしまいまして……』
「もしかして、真桜ちゃんパターン?」
『ええ。それも二人……というか、双子というか……』
「ふ、双子っ!?」
双子の聖女って初じゃない?
「僕たちの子に……ってこと?」
『つまりその……』
「私達で、一人ずつ……といいますか……」
「僕はいいけど……」
「……!」
『うふふふふ……これで聖女を助ける名目で定期的にソラ君と子作りし放題……!』
そんなに嬉しそうな顔で聞こえるように企まれると、なんだかこちらもいじってみたくなってくる。
「そうだ!シルヴィがエリス様に憑依して、三人で双子を産むというのは……」
『な、なななっ……!?』
「な、なんという業の深いことを……!?」
『背徳的な子作り……ごくり』
「駄目……?」
『「……!!!!」』
おねだりポーズで二人に迫ってみると、二人は鼻血を吹いて倒れた。
あ、そういえば二人は感覚共有してるんだっけか……。




